線維筋痛症の原因と改善方法|低気圧・食事・化学調味料・運動・薬と神経科学

目次

線維筋痛症の痛みはなぜ日によって変わるのか

線維筋痛症は、全身の痛みや強い疲労感を特徴とする慢性疼痛疾患です。

「線維筋痛症の原因は何か」「線維筋痛症は治るのか」「食事や運動で改善するのか」といった疑問を持つ方は多いと思います。

実際、線維筋痛症では天気、ストレス、睡眠、食事、運動量などによって症状が変動することが知られています。

このような変動は筋肉や骨格だけでは説明できないことが多く、現在では神経系の痛み処理、自律神経、免疫反応、生活習慣など複数の要因が関係していると考えられています。

本記事では、神経科学とペインサイエンスの視点から、線維筋痛症の痛みのメカニズムを整理します。

このコラムで整理する内容

本記事では、線維筋痛症に関する研究論文をもとに、症状の特徴、診断の考え方、痛みの背景にある神経系の変化を整理します。

さらに、低気圧や天気、食事や腸内環境、MSGと神経の興奮、運動療法、薬物療法、AVS仮説、末梢神経の状態変化など、複数の研究領域を統合して理解することを目的としています。

線維筋痛症を単一の原因で説明するのではなく、複数の要因がどのように症状の変動に関係するのかを整理していきます。

線維筋痛症の主な症状|どのような症状があるのか

線維筋痛症では、全身の慢性的な痛み、強い疲労感、睡眠の質の低下、集中力の低下、感覚過敏などさまざまな症状が報告されています。

また、天気の変化、ストレス、睡眠不足などによって症状が変動することも特徴です。
つまり線維筋痛症は一定の強さで続く痛みというより、神経系や生活条件によって変動する慢性疼痛として理解する必要があります。

睡眠不足と慢性痛の関係についてはこちらの記事でも解説しています。

▶︎ 睡眠不足が痛みに影響する理由とは

線維筋痛症の診断|どのように診断されるのか

線維筋痛症は血液検査や画像検査だけで診断できる疾患ではありません。
現在は症状の特徴や痛みの分布をもとに総合的に診断されます。

2016年のアメリカリウマチ学会(ACR)の診断基準では、広範囲の痛み(Widespread Pain Index:WPI)、症状の重症度(Symptom Severity Scale:SSS)、症状の持続期間、他の疾患の除外などが評価されます。

かつては圧痛点(Tender Points)が診断基準として用いられていました。

1990年の基準では身体18か所の圧痛点のうち11か所以上で圧痛があることが条件とされていました。

しかし圧痛点評価は検査者によるばらつきが大きく、疲労感や睡眠障害など線維筋痛症の主要症状を十分に評価できないという問題がありました。

そのため現在の診断基準では、圧痛点の数よりも痛みの広がりと症状の重症度が重視されています。

線維筋痛症の原因は何か|脳だけでは説明できない痛み

線維筋痛症は長い間「原因不明の病気」とされてきました。

現在では、中枢神経の痛み処理の変化(中枢性感作)、自律神経の変化、末梢神経の状態変化、ストレスや睡眠などの生活要因など、複数の要因が関係していると考えられています。

特に注目されているのが神経系の状態変化です。
神経の状態が敏感になると、通常より軽い刺激でも痛みとして感じやすくなる可能性があります。

このような神経の過敏状態は、広範囲の痛みや感覚過敏など線維筋痛症の症状と一致する点が多いと考えられています。

▶︎ 慢性疼痛とは

線維筋痛症は治るのか|完全に治る病気なのか

線維筋痛症は「治るのか」という疑問を持つ方が多い疾患です。

現在の医学では、線維筋痛症は完全に消失する疾患というより、症状の改善と安定を目指して管理していく慢性疾患として理解されています。

その理由は、神経系、自律神経、生活習慣、ストレスなど複数の要因が関係しているためです。

研究では運動療法、生活習慣の改善、ストレス管理などによって症状が軽減するケースがあることが報告されています。

線維筋痛症でやってはいけないこと|症状を悪化させる可能性のある習慣

線維筋痛症では神経系が敏感な状態になっている可能性があります。

そのため、強すぎるマッサージ、過度な運動、睡眠不足、慢性的なストレス、炎症を起こしやすい食事などが症状を悪化させる場合があります。

慢性痛では「頑張りすぎること」が症状を悪化させることもあります。

強い刺激の施術についてはこちらの記事でも解説しています。

▶︎強いマッサージで筋肉は溶ける?

線維筋痛症と低気圧|天気で痛みが悪化する理由

線維筋痛症の痛みと天候の関係を調べた研究では、次のような結果が報告されています。

「低気圧と湿度の増加は痛みの強さと不快感の増加と有意に関連していた」

「低気圧の変化に対する反応には個人差があった」

「ストレスレベルが低気圧と痛みの関係を調節した」

「悪天候が痛みを増加させるという信念は自己実現的予言になる可能性がある」

Blame it on the weather? The association between pain in fibromyalgia, relative humidity, temperature and barometric pressure
Asbjørn J. Fagerlund, Maria Iversen, Andrea Ekeland, Connie Malèn Moen, Per M. Aslaksen

この研究は線維筋痛症の痛みが身体構造だけでは説明できないことを示しています。

気圧変化は自律神経や痛みの感受性に影響する可能性があり、慢性痛では環境要因と神経系の反応が相互作用する可能性があります。

慢性痛と天気の関係についてはこちらの記事でも解説しています。

▶︎天候・気圧変化で痛みが増す原因とは

線維筋痛症と食事|炎症と痛みの関係

食事と線維筋痛症の痛みの関係についても研究が行われています。

「炎症誘発食は線維筋痛症患者の疼痛過敏と関連していた」

「線維筋痛症患者では炎症性サイトカインの上昇が観察されている」

「抗炎症食は疼痛過敏を軽減する可能性がある」

Dietary Inflammatory Index Scores Are Associated with Pressure Pain Hypersensitivity in Women with Fibromyalgia
María Correa-Rodríguez

炎症性サイトカインは神経の感受性を高めることが知られており、慢性痛のメカニズムとして研究されています。

腸内環境と慢性痛の関係についてはこちらの記事でも解説しています。

▶︎腸内細菌叢と痛みの関係|慢性疼痛・低糖質食との関連

線維筋痛症と化学調味料|神経の興奮との関係

食事中のグルタミン酸と線維筋痛症の関係を調べた研究もあります。

「MSGを含む興奮毒性食品添加物を除外した食事療法は症状の有意な回復を示した」

「線維筋痛症患者では脳脊髄液グルタミン酸レベルの上昇が報告されている」

The effect of dietary glutamate on fibromyalgia and irritable bowel symptoms
K.F. Holton

グルタミン酸は中枢神経の主要な興奮性神経伝達物質です。

慢性痛ではグルタミン酸系の活動増加が報告されており、神経の興奮状態が痛みの感受性に影響する可能性があります。

線維筋痛症に運動は有効か

線維筋痛症では運動療法が重要な非薬物治療として推奨されています。

「中程度の有酸素トレーニングを12週間行うと幸福度と身体機能が向上する可能性がある」

「筋力トレーニングは痛み、圧痛、抑うつを軽減する可能性がある」

Exercise for treating fibromyalgia syndrome
Angela J Busch

またEULARガイドラインでは次のように述べられています。

「運動が疼痛、身体機能、幸福感に及ぼす効果、利用可能であること、比較的低コストであること、安全性の懸念がないことを考慮して、運動の使用を強く推奨する。」

EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia
GJ Macfarlane

運動と慢性痛の関係については以下の記事でも解説しています。

▶︎運動で痛みが和らぐ理由とは

線維筋痛症に対する鍼治療とカイロプラクティックの評価

線維筋痛症の治療については欧州リウマチ学会(EULAR)がエビデンスレビューに基づくガイドラインを発表しています。

鍼治療については

「鍼治療の有効的な要素についてはほとんど理解されておらず、実際の鍼治療と偽の鍼治療の使用を支持するエビデンスの一貫性は低かった。」

EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia

とされています。

またカイロプラクティックについては

「安全性への懸念から『反対する(使用推奨しない)』の評価を与えた。」

EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia

と報告されています。

線維筋痛症では神経系の感受性が高まっている可能性があり、強い刺激や侵襲的な刺激は末梢性感作や中枢性感作を悪化させる可能性があります。

線維筋痛症と薬|プレガバリンの効果

プレガバリンは神経の興奮を抑制する薬として使用されます。

「プレガバリンを服用した患者の10人に1人は痛みが30〜50%減少した」

Pregabalin and gabapentin for pain
Stephanie Mathieson, Chung-Wei Christine Lin, Martin Underwood, Sam Eldabe

しかしすべての患者様に有効というわけではなく、慢性痛では薬物療法だけでなく生活要因や神経系の状態も重要と考えられています。

線維筋痛症の末梢仮説|皮膚血管シャント(AVS)

線維筋痛症では末梢組織の変化を示唆する研究もあります。

「AVSでは線維筋痛症患者の神経支配が有意に増加していた」

「無毛皮膚AVSへの過度の知覚神経支配は、線維筋痛症患者の手に深刻な痛みの原因となる可能性が高い」

Excessive Peptidergic Sensory Innervation of Cutaneous Arteriole–Venule Shunts (AVS) in the Palmar Glabrous Skin of Fibromyalgia Patients
Phillip J. Albrecht

この研究は線維筋痛症の痛みが中枢神経だけでなく、末梢神経や血管周囲の神経支配の変化も関係する可能性を示しています。

末梢神経の状態変化と慢性痛

慢性痛では末梢神経の状態変化が関係している可能性があります。

神経が敏感な状態になると、触覚や圧刺激など通常は問題にならない刺激でも痛みとして感じられることがあります。

このような末梢神経の状態変化と中枢神経の処理変化が組み合わさることで、線維筋痛症のような広範囲の痛みが形成される可能性があります。

▶︎ 末梢神経とは

痛み刺激を与えない整体|SENSIBLE SOLUTIONS

慢性痛では強い刺激が症状を悪化させることがあります。

SENSIBLE SOLUTIONSでは神経科学とペインサイエンスに基づくDNM整体(Dermo Neuro Modulating)を行っています。
皮神経への穏やかな刺激を用い、神経の反応を確認しながら施術を行う方法です。

線維筋痛症によって仕事が困難になっていた方が、DNM整体を受けて体調が安定し、仕事を再開できるようになったケースもあります。

▶︎詳しくはこちら

結論

線維筋痛症は単一の原因で説明できる疾患ではありません。

現在の研究では、中枢神経の痛み処理の変化(中枢性感作)、末梢神経の状態変化、自律神経、睡眠、ストレス、食事や腸内環境、天候など複数の要因が関係する可能性が示されています。

これらの要因は互いに影響し合いながら痛みの感受性や症状の変動を生み出します。
そのため慢性痛の管理では生活習慣、睡眠、運動、ストレス管理など複数の要因を総合的に考えることが重要です。

また慢性痛では神経系が敏感になっている可能性があるため、強い刺激や侵襲的な刺激ではなく、神経系の反応を考慮した穏やかなアプローチが重要と考えられています。

 


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