大腿神経伸展テストとは何か
大腿神経伸展テストは、腹臥位で膝関節を屈曲し、必要に応じて股関節伸展を加えながら、腰部、殿部、前大腿部、内側下腿にかけて症状が再現されるかをみる検査です。
一般には、前大腿部痛やしびれ、下腿内側まで続く違和感が再現される場合に、上位腰椎神経根や大腿神経系の関与を考える材料として用いられます。
この検査で重要なのは、大腿四頭筋の伸張感ではなく、L2〜L4神経根、腰神経叢、大腿神経、伏在神経へ続く神経系に関連した症状が、膝関節屈曲や股関節伸展でどう変化するかです。
前大腿部の漠然とした張り感や、大腿四頭筋の伸張だけで説明できる不快感まで陽性に含めると、解釈は不正確になります。
そのため、膝がどこまで曲がったかではなく、どこに、どのような感覚が、どの手順で出現し、どの手順で変化したかを確認することが重要です。
大腿神経伸展テストで考える神経系
まず候補に入るのは、L2〜L4神経根、腰神経叢、大腿神経、伏在神経です。
鼠径部から前大腿部、膝前面に広がる症状では大腿神経系を、内側下腿まで続く症状では伏在神経を意識します。
ただし、この検査で誘発される症状は、大腿神経幹の局所障害だけを意味するわけではありません。神経根、腰神経叢、大腿神経の鼠径部周囲、伏在神経まで、連続した神経系のどこを優先して考えるかを判断する必要があります。
また、内側大腿の症状では閉鎖神経、外側大腿部の感覚異常では外側大腿皮神経など、近い領域の神経も鑑別に入ります。
そのため、症状分布、感覚異常、膝蓋腱反射、大腿四頭筋の筋力、他の神経学的所見を合わせて解釈することが重要です。
大腿神経伸展テストと画像所見のズレ
大腿神経伸展テストは、上位腰椎椎間板ヘルニアやL2〜L4神経根刺激との関連で語られることが多い検査ですが、MRI所見、症状、このテストの所見が常に一致するわけではありません。
腰椎MRIでは、L2〜L4周囲の変化があっても無症状のことがあり、反対に明確な前大腿部症状があっても画像で十分に説明できないことがあります。
そのため、画像で変化がみえたという事実だけで、今ある症状や徒手検査の陽性所見を一対一で説明することはできません。大腿神経伸展テストは画像診断の代わりではなく、画像所見や神経学的所見と並べて解釈すべき臨床所見です。
診断精度研究ではどう評価されているのか
この論文では、腰仙部神経根症を診断するうえで、臨床的な神経学的検査がどの程度有用かを検討しています。
大腿神経伸展テストについては、L2〜L4領域の神経根症状を評価する検査として扱われ、感度1.00、特異度0.83と報告されています。
この数値だけをみると、大腿神経伸展テストは上位腰椎神経根症を検出するうえで有用にみえます。
ただし、批判的に読むと、信頼区間は感度0.40〜1.00、特異度0.52〜0.98と広く、結果の不確実性は小さくありません。
つまり、この研究は大腿神経伸展テストがL2〜L4領域の評価で参考になる可能性を示していますが、単独で高位の腰椎椎間板ヘルニアや神経根障害を確定できると読むべきではありません。
症状分布、膝蓋腱反射、大腿四頭筋の筋力、感覚異常、画像所見などと合わせて、どの神経レベルを追加で評価するかを考える検査として位置づける必要があります。
Accuracy of clinical neurological examination in diagnosing lumbo-sacral radiculopathy: a systematic literature review
Tawa N, Rhoda A, Diener I
結論
大腿神経伸展テストは、L2〜L4神経根から腰神経叢、大腿神経、伏在神経へ続く神経系の関与を考える検査です。
ただし、検査名から大腿神経だけを想定すると、解釈は狭くなります。
前大腿部や内側下腿の症状では大腿神経や伏在神経を考えますが、症状分布によっては閉鎖神経や外側大腿皮神経も鑑別に入ります。
一方で、この検査は単独で障害部位や主な原因と考えられる組織を確定するものではありません。
症状分布、再現される感覚、膝蓋腱反射、大腿四頭筋の筋力、画像所見、他の神経学的所見と合わせて、どの神経レベルを追加で評価するかを考える検査として位置づけることが重要です。
関連コラム|クリティカルシンキングの理解を深める

