運動による鎮痛は内因性オピオイドと疼痛抑制系によるもの。
運動は慢性疼痛に良いとされていますが、実際はどんなことで鎮痛が起きているのかと気になったことはありませんか?
その原因は中枢神経系にあったのです。
◆海外の論文
「 2010年に行われた37件のランダム化比較試験のレビューでは、腰痛に対する運動療法は、通常のケアと比較して、痛みの強さが減少し、障害と長期的な機能が改善されたことが明らかになった。」
「ある特定の種類の運動が別の運動よりも優れているというエビデンスはなかった。」
「推定される生体力学的欠陥を運動で修正できない場合でも、痛みや機能の改善には有益であることが証明されている。」
「局所的な慢性疼痛患者では、痛みのある部位の外側の筋肉を運動させると、痛みのある部位の圧感受性が低下したが、痛みのある筋肉の運動は、痛みの感受性を高める傾向があった。」
「運動による疼痛緩和に関与するメカニズムは多因子的である。 この効果の重要な寄与因子として考えられるのは、内因性オピオイドの放出と、脊髄および上脊髄の疼痛抑制伝導路の活性化である。」
Exercise Therapy for Chronic Pain
Heather R. Kroll, MD
◆まとめ
この論文から分かることは、
・運動は鎮痛効果があるし機能の改善も見込める。
・ある種の運動がより効果的だという根拠はない。
・バイメカの問題が残っていても運動で鎮痛が起こる。
・痛い部位を使って運動させると痛みに敏感になり、その外側で運動させると圧力に対する感受性が低下する。
・運動誘発性鎮痛の重要な因子として内因性オピオイド、疼痛抑制系の働きがある。
です。
◆考察
つまり、運動することで痛みが軽くなるのは、中枢神経系からのオピオイドによるものや疼痛抑制系が働くことによるもの。
運動による鎮痛=神経系の働き
ということです。
また運動療法や疼痛への様々なエクササイズがありますが、どれが一番鎮痛に対して効果的かどうかは今のところ根拠がないのです。
であれば、その相手の方が一番楽しくやれて、痛みが増加しないものを選ぶ必要があります。
また中枢神経系による鎮痛であるのならば、運動する前後のコンテキスト、セラピストやトレーナとの相性、言葉のかけ方、空間、情報の共有、その日の気分、家庭環境や社会環境にも影響を受けるということ。
運動だから筋肉!運動だから構造!ではなく、運動でもバイオサイコソーシャルの視点やペインサイエンスを忘れてはなりません。