神経伝導検査の限界とは|末梢神経の電気診断検査で評価できる線維
末梢神経障害の評価では、電気診断検査(Electrodiagnostic testing)が広く用いられています。
代表的な検査として、神経伝導検査(Nerve conduction study)があり、臨床では絞扼性神経障害や神経根障害などの診断に使用されています。
しかし、これらの検査が末梢神経のどの線維を主に評価しているのかは、十分に意識されないことがあります。
末梢神経は多様な神経線維で構成されており、そのすべてを電気診断検査で捉えられるわけではありません。
本稿では、神経伝導検査で評価されやすい線維と見えにくい線維の違いから、この検査の限界を解説します。
神経伝導検査で主に評価されるのは大径有髄線維
神経伝導検査では、主に伝導速度の速い大径有髄線維の機能が評価されます。
具体的には、Aβ線維のような太く有髄の線維(直径はおよそ8〜13μm)が中心です。
一方、Aδ線維はおよそ1〜4μmの小径有髄線維、C線維はおよそ0.2〜1.5μmの無髄小径線維であり、一般的な神経伝導検査では十分に反映されません。
「ゆるやかに進行する軽度の神経圧迫(絞扼性神経障害をより忠実に模倣したもの)を調べた最近の研究では、小径線維が優先的に変性する一方、有髄軸索は脱髄の徴候を示すが、ほとんど無傷のままであることが示唆されている。」
「臨床において、大径線維検査のみに頼ることは、絞扼性神経障害が疑われる患者を評価するには、不十分な可能性が示された。」
Entrapment Neuropathies: Challenging Common Beliefs With Novel Evidence
つまり、神経伝導検査は末梢神経全体を見ている検査ではなく、評価対象には明確な偏りがあります。
小径線維に関わる症状は検査結果と一致しないことがある
Aδ線維やC線維は、侵害受容、温度覚、自律神経機能などに関与しています。
Aδ線維は比較的速い鋭い痛みや冷覚、C線維は灼熱感、うずくような痛み、広がる不快感などと関係します。
そのため、しびれ、灼熱感、温度異常、違和感のような症状があっても、神経伝導検査では異常が明確に出ないことがあります。
絞扼性神経障害では初期変化を捉えにくいことがある
近年の研究では、ゆるやかに進行する軽度の神経圧迫では、小径線維が優先的に変化する可能性が示されています。
この場合、大径有髄線維は比較的保たれるため、絞扼性神経障害の初期や軽症例では、症状があっても神経伝導検査は正常あるいは軽微な変化にとどまることがあります。
したがって、検査が正常でも、末梢神経由来の症状まで否定することはできません。
結論|神経伝導検査が正常でも神経症状は否定できない
神経伝導検査は有用な診断ツールですが、主にAβ線維のような大径有髄線維を評価する検査です。
一方で、Aδ線維やC線維のような小径線維の変化は十分に反映されないため、しびれや痛みなどの症状があっても、検査では正常あるいは軽微な変化にとどまることがあります。
とくに絞扼性神経障害では小径線維が先に影響を受ける可能性があり、検査結果のみで末梢神経の関与を否定することはできません。
臨床では、症状の性質、分布、経過、身体所見を合わせて解釈し、神経伝導検査の評価範囲と限界を踏まえて判断することが重要です。
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