ドロップアームテストとは何か|腱板断裂をみる肩の整形外科的テスト
ドロップアームテストは、肩関節外転位から上肢をゆっくり下ろす過程で、腕を保持できるかを確認する整形外科的テストです。
一般的には、棘上筋腱を中心とした腱板断裂、とくに全層断裂を疑う検査として用いられます。
検査では、患者様の上肢を肩関節外転90度付近まで挙上し、その位置からゆっくり下ろしてもらいます。途中で腕が急に落ちる、または強い痛みによって制御できない場合を陽性とします。
ただし、この検査は棘上筋腱だけを選択的に評価しているわけではありません。
棘上筋は肩甲上神経の支配を受けているため、腱板の構造的問題だけでなく、肩甲上神経を介した筋出力の変化も検査反応に関与します。
この検査で言えるのは、肩関節外転位から上肢を下ろす過程で、症状が再現または変化したということまでです。
ドロップアームテストと画像所見はどこまで一致するのか
この論文では、肩の画像所見と肩症状、さらに症状の持続との関連について検討されています。
研究では、MRIや超音波などで確認される腱板断裂、腱板変性、滑液包炎、関節変性などの画像所見が、必ずしも症状と一貫して対応するわけではないことが示されています。
つまり、画像上で腱板断裂や変性が確認されても、それだけで患者様の痛みの主な原因と判断することはできません。
肩の痛みを評価する際には、画像所見を重要な情報として扱いながらも、症状の出方、筋力、可動域、外傷歴、経過、検査反応を組み合わせて判断する必要があります。
What Imaging-Detected Pathologies Are Associated With Shoulder Symptoms and Their Persistence? A Systematic Literature Review
Gui Tran, Paul Cowling, Toby Smith, Julie Bury, Adam Lucas, Andrew Barr, Sarah R. Kingsbury, Philip G. Conaghan
ドロップアームテストの診断精度をどう読むか
この論文では、肩痛を有する208名を対象に、腱板断裂に対する15種類の整形外科的テストの診断精度が検討されています。
ドロップアームテストは、棘上筋断裂に対して感度24%、特異度96%、陽性尤度比6.45と報告されています。
この結果は、陽性であれば棘上筋断裂の可能性が高まる一方、陰性でも断裂を否定する根拠にはなりにくいことを示しています。
つまり、ドロップアームテストはスクリーニング検査としては不十分ですが、陽性所見が出た場合には腱板断裂を疑う臨床情報として有用です。
The Diagnostic Accuracy of Special Tests for Rotator Cuff Tear: The ROW Cohort Study
Nitin B. Jain, Jean-Sébastien Roy, A. S. MacDermid, G. Woodhouse, J. A. Katz, C. M. Losina
ドロップアームテストを末梢神経の視点から再検討する
ドロップアームテスト陽性を、棘上筋腱だけで説明するのは不十分です。
棘上筋は肩甲上神経の支配を受けているため、肩関節外転位から上肢を下ろす過程では、腱板そのものだけでなく、肩甲上神経を介した筋出力も検査反応に関与します。
肩甲上神経は肩甲切痕を通過して棘上筋へ向かい、さらに棘下筋にも分布します。
そのため、肩後上方部痛、外旋筋力低下、棘上筋・棘下筋領域の萎縮や違和感がある場合には、腱板断裂だけでなく、肩甲上神経の関与も検討する必要があります。
特に、外転位を保持できない反応が、腱断裂によるものなのか、痛みによる防御反応なのか、肩甲上神経を介した筋出力低下なのかは、ドロップアームテスト単独では分けられません。
臨床では、外旋筋力、棘上筋・棘下筋の萎縮、肩後方の症状、圧痛部位、頚部運動との関係を合わせて確認します。
腋窩神経は三角筋と小円筋を支配し、肩外側の感覚にも関与するため、肩外側部の痛みや感覚異常が強い場合には、三角筋出力や外側上腕皮神経領域の症状も確認します。
ただし、ドロップアームテストで神経を選び分けることはできません。
この検査を末梢神経の視点からみる場合も、中心になるのは棘上筋を支配する肩甲上神経であり、腋窩神経やその皮神経は症状分布に応じて補助的に検討する位置づけです。
結論|ドロップアームテストの臨床的な位置づけ
ドロップアームテストは、棘上筋断裂を中心とした腱板断裂を疑うための整形外科的テストです。
ただし、陽性所見だけで腱板断裂を証明する検査ではなく、陰性所見だけで除外する検査でもありません。
また、画像上の腱板断裂や変性が、そのまま痛みの主な原因を示すわけでもありません。
この検査で確認できるのは、肩関節外転位から上肢を下ろす過程で、腕を保持できるか、症状が再現されるか、筋出力がどのように変化するかという臨床反応です。
その反応を、腱板の構造、画像所見、筋力、可動域、症状の経過に加えて、棘上筋を支配する肩甲上神経の視点から読むことで、ドロップアームテストはより臨床的な意味を持ちます。
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