コア・スタビリティ
安定化エクササイズと腰痛①
コアとは、主に体幹部の深層筋(骨盤底筋群・多裂筋・腹横筋・横隔膜)のことを言います。ローカル筋/インナーマッスルとも呼ばれています。
それらのコアを鍛えることで、体幹を安定化させるトレーニングがあります。
コアは深部の筋肉のことであり、表層の筋肉はグローバル筋/アウターマッスルと、呼ばれています。
このコアでよく出てくるのが「腹横筋」です。
腹部のコルセットのようにあるコアマッスルです。
これを鍛えることで、腰痛を軽減させるという考え方は、一般的には広まっています。
しかし、本当に、コアマッスルである腹横筋を鍛えることと、腰痛との関連性はあるのでしょうか?
また、怪我の予防や腰痛の予防にもなるのでしょうか?
◆腹筋の弱さや体重増加と腰痛は関係がない
下記論文によると、妊婦の方は腹部の伸張により、腹横筋や腹筋群に力が入らず、シットアップという腹筋運動ができない方が16.6%いるとされています。
この論文によるとシットアップ出来るかどうかと、妊婦の方によくある腰痛との関連性はありませんでした。
つまり、腹筋の弱さと腰痛は関連性が低いのです。
また、肥満と腰痛との関連性も低いと否定されています。つまり体重が多いからといって、腰痛になるわけではないのです。
「実際、妊婦の研究では、この広範な腹部の伸張とそれに続く筋力損失のためにシットアップを行う能力を失っていることが示された。」
「妊娠していないすべての女性がシットアップを行うことができたのに対し、妊婦の16.6%は1回のシットアップを行うことができなかった。」
「しかし、シットアップと腰痛との間に相関性はない、すなわち腹筋の強度は腰痛に関連していなかった。」
「脊柱の安定性を含む局所的な筋骨格系の問題が、妊娠中の腰痛の発症に重要な役割を果たしているという証拠はほとんどない。」
「疫学的研究は、体重増加と肥満が腰痛との関連性が弱いことを示している。」
The Myth of Core Stability
Professor Eyal Lederman
◆立位や歩行時には体幹筋はほぼ使われていない。
立位や歩行中の体幹筋/コアマッスルは殆ど活動しておらず、32キロの荷重を加えても、伸筋と屈筋の共収縮が1%が3%に活性化するだけと言われています。
さらに慢性腰痛の方にコア安定化運動を4週間行わせても、コアマッスルの持久力が変わらなかったとのことです。
また、コアマッスルエクササイズではコア筋の筋肥大は見込めないと言われています。
「立位と歩行中、体幹筋は最小限に活動している。立位時、深部の脊柱起立筋、腰筋、腰方形筋はほとんど沈黙している。」
「一部の被験者では、これらの筋肉に検出可能なEMG活性はない。歩行中に腹直筋は平均2%の最大自発収縮(MVC)、外腹斜筋は5%のMVC 活動を行う。」
「立位中の「能動的」安定化は、体幹に32Kgの荷重が加わったときに1%MVC未満から3%MVCまで上昇すると推定される、体幹屈筋と伸筋の非常に低いレベルの共収縮によって達成される。」
「そのような低い共収縮レベルは、脊髄安定化のために強さの損失が問題になる可能性は低いことを示唆している。」
「コア安定化運動の間、「コア筋肉」の最大随意収縮(MVC)は、筋肥大に必要とされるレベルをはるかに下回るので、筋強度の増加をもたらす可能性は低いことが示されている。」
「さらに、慢性腰痛疲労の研究では、4週間のコア安定化運動は筋持久力の有意な改善を示さなかった。」
「最近の研究では、腹筋の筋力増強を促進するには70%ものMVCが必要であることが実証されている。」
The Myth of Core Stability
Professor Eyal Lederman
◆コアマッスルだけを分けることはできない。
コアマッスルだけを分けて使うことも、鍛えることも出来ません。
つまり、インナーマッスルやアウターマッスルというわけ方は、解剖学的な分類なだけであって、機能的には分けられないのです。
「コア安定化の原理の1つは、腹横筋を腹部の他の筋肉から隔離する方法、または「コア」を「全身」の筋肉から隔離する方法を教えることである。」
「毎日の活動またはスポーツ活動中に他のすべての体幹筋とは無関係に機能する体幹筋の「コア」グループが存在することは疑わしい。」
「このような分類は解剖学的だが、機能的な意味はない。 運動出力および筋肉の動員は広範囲であり、全身に影響を与える。」
「実際、腹横筋が特異的に活性化できるという研究からの支持はない。」
The Myth of Core Stability
Professor Eyal Lederman
◆まとめ
次回は、コアスタビリティと関連する、内部外部フォーカスの問題点、コア安定化運動でも腰痛減少効果が出るのはなぜ?
について紐解いていきます。