総腓骨神経の絞扼性神経障害とは何か|基本像を確認する
総腓骨神経の絞扼性神経障害は、総腓骨神経麻痺、総腓骨神経障害として扱われることもある病態で、膝外側から下腿前外側、足背に分布する末梢神経の絞扼が関わります。
整形外科領域では、下垂足や足背のしびれは腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、神経根障害に由来すると考えられやすく、この病態は見落とされやすい傾向があります。
総腓骨神経は、下垂足・足背のしびれを末梢神経という視点からみるうえで重要です。
研究知見|総腓骨神経とその分枝の絞扼は下垂足の原因となる
この論文で、総腓骨神経障害では下垂足が最も典型的な所見である一方、痛みやしびれだけが症状として出る例もあり、腰椎由来の神経根障害や坐骨神経障害などとの鑑別が重要だと述べています。
とくに、腓骨頭周囲は障害の生じやすい部位であり、症状が下腿外側から足背に及ぶ場合には、総腓骨神経とその分枝の分布を踏まえて評価する必要があります。
つまり、下垂足がはっきりしない場合でも、下腿前外側や足背の痛み、しびれ、感覚異常があれば、総腓骨神経の絞扼性神経障害を候補に入れるべきだといえます。
次の研究では、特発性の総腓骨神経絞扼障害では、静止時だけでは分かりにくくても、足関節の反復底屈や伸展で総腓骨神経への圧が上昇し、症状が誘発される動的な要素が関わることが示されています。
この点は重要です。下腿外側から足背にかけての痛みやしびれがあっても、安静時の評価だけでは異常が目立たず、動作や反復負荷ではじめて症状が明確になることがあるからです。
つまり、総腓骨神経の絞扼性神経障害は、単なる固定的な圧迫だけでなく、足関節運動に伴って変化する動的な絞扼として捉える必要があります。
また別の研究では、総腓骨神経の絞扼性神経障害に対する除圧術後の経過をみたところ、神経根障害を合併している例でも、筋力低下、痛み、しびれの改善率は、合併のない例と大きな差がなかったと報告されています。
この点は重要です。腰椎に脊柱管狭窄や椎間板ヘルニア、神経根の圧迫所見があると、症状の原因をすべて腰椎に結びつけやすくなります。
しかし、この研究がみているのは腰椎手術後ではなく、総腓骨神経の除圧術後です。つまり、腰椎の異常があっても、末梢である総腓骨神経への対応で症状が改善する例があることを示しています。
なぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない
下垂足や足背のしびれでは、腰椎の異常が疑われやすく、画像診断でも椎間板膨隆、脊柱管狭窄、神経根の圧迫などが確認されることがあります。
しかし、画像所見があることと、その所見が今ある症状の主因であることは同義ではありません。
腰椎画像だけを根拠にすると、末梢神経由来の症状は候補から外れてしまいます。
下垂足・足背のしびれを末梢神経からどうみるか|浅腓骨神経と深腓骨神経の分布から読み直す
重要なのは、症状分布と動作による変化です。
下腿前外側から足背に広くしびれがあるなら浅腓骨神経、第1趾と第2趾の間の感覚異常や足関節背屈・足趾背屈の低下が目立つなら深腓骨神経というように、分布を知ることで見立ては変わります。
さらに、しゃがみ込み、脚組み、膝外側への圧迫、足関節底屈で、痛みやしびれ、力の入りにくさがどう変化するのかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。
結論
総腓骨神経の絞扼性神経障害は、下垂足や足背のしびれを腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、神経根障害だけで理解していては捉えきれない病態です。
画像所見があることと、症状の原因がそこにあることは同義ではありません。
構造異常だけで判断せず、総腓骨神経を含む末梢神経の分布と動作での変化をあわせて評価する必要があります。
関連コラム|ペインサイエンスの理解を深める

