殿皮神経障害とは何か|腰痛・殿部痛を皮神経から再考する

目次

殿皮神経障害とは何か|基本像を確認する

殿皮神経障害は、腰部から殿部に分布する皮神経、とくに上殿皮神経や中殿皮神経の絞扼が関わる病態です。

整形外科領域では、腰痛や殿部痛は腰椎や仙腸関節に由来すると考えられやすく、殿皮神経障害は見落とされやすい傾向があります。

とくに上殿皮神経と中殿皮神経は、腰痛・殿部痛を皮神経という視点から再考するうえで重要です。

殿皮神経障害の研究知見|上殿皮神経と中殿皮神経の絞扼は腰痛の原因となる

殿皮神経障害では、上殿皮神経と中殿皮神経の両方が腰痛や殿部痛の原因として報告されています。

重要なのは、腰痛として一括されている症状の中に、脊柱や仙腸関節だけでは説明できない、皮神経由来の訴えが含まれているという点です。

この論文では、上殿皮神経と中殿皮神経はいずれも腰殿部の感覚を担う純粋な感覚神経であり、腸骨稜周囲や長後仙腸靱帯付近で絞扼されることで腰痛の原因となりうると述べています。

また、上殿皮神経絞扼は腰痛患者の1.6%〜14%にみられ、中殿皮神経絞扼も見落とされやすい原因として報告されています。

さらに、これらの絞扼では下肢症状を伴うこともあり、腰椎由来の神経根症や坐骨神経痛のようにみえるため、脊柱の画像所見だけでは説明できない腰痛を考えるうえで重要な視点になります。

Superior and Middle Cluneal Nerve Entrapment as a Cause of Low Back Pain. Toyohiko Isu, Kyongsong Kim, Daijiro Morimoto, Naotaka Iwamoto.

腰痛を脊柱や深部組織だけで説明しようとする見方では、殿皮神経障害は候補から外れてしまいます。

中殿皮神経を扱った下記の研究では、殿部中央や仙腸関節周囲にみえる症状でも、皮神経を候補に入れるべきことが示されています。

「中殿皮神経の絞扼は、腰痛と下肢症状を引き起こす。」

Entrapment of middle cluneal nerves as an unknown cause of low back pain. Yoichi Aota.

次の論文では、中殿皮神経の絞扼は原因不明の腰痛として見逃されやすく、圧痛点の確認による症状変化が診断に有用であると述べています。

また、症状は腰椎由来の神経根症や坐骨神経痛に似ることがあり、画像所見だけでは原因を特定できない症例も少なくありません。

そのため、脊柱や仙腸関節だけで説明できない腰痛では、長後仙腸靱帯周囲の皮神経絞扼という視点を持つことが、鑑別の幅を広げるうえで重要になります。

Superior and Middle Cluneal Nerve Entrapment: A Cause of Low Back and Radicular Pain. Stephen Helm, David Benyamin, Omid Varhabhatla, Jan Schwarzkopf.

見落とされやすい原因だからこそ、評価に入れることが重要です。

▶︎ 整形外科領域の臨床再考をみる

殿皮神経障害はなぜ見落とされるのか|画像所見だけで原因は決められない

腰痛や殿部痛では、脊柱や骨盤周囲の構造異常が疑われやすく、画像診断でも椎間板変性、脊柱管狭窄、椎間関節の変化などが確認されます。

しかし、脊柱などの構造変性と痛みとの相関性は高くなく、画像所見だけで痛みやしびれの原因を決めることはできません。

そのため、構造異常だけを根拠にすると、皮神経などの末梢神経由来の症状は候補から外れてしまいます。

▶︎ 脊柱MRIと痛みの関係をみる

腰痛・殿部痛を皮神経からどうみるか|上殿皮神経と中殿皮神経の分布から読み直す

腰痛・殿部痛を皮神経からみるときに重要なのは、症状分布と動作による変化です。

腸骨稜後方から殿部上外側へ広がるなら上殿皮神経、仙骨外側から殿部中央へ広がるなら中殿皮神経というように、分布を知ることで評価は変わります。

さらに、座位や腰椎の運動、神経分布部位への圧迫で、痛みやしびれがどう変化するのかを確認することで、考慮すべき部位は絞られます。

▶︎ 殿部痛をどう読み分けるか

▶︎ 上殿皮神経とは何か

▶︎ 中殿皮神経とは何か

結論

殿皮神経障害は、腰痛・殿部痛を脊柱や仙腸関節だけで理解していては捉えきれない病態です。

画像所見があることと、症状の原因がそこにあることは同義ではありません。

だからこそ、構造の変性だけで判断せず、上殿皮神経・中殿皮神経を含む皮神経の分布と動作での変化をあわせて評価する必要があります。

見落とされやすいのは、画像には映りにくい皮神経などの末梢神経です。そこを評価に入れるかどうかで、腰痛・殿部痛の見立ては大きく変わります。

 


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