頚椎牽引テストとは何か|整形外科的テストを吟味する

整形外科的テストDNM
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頚椎牽引テストとは何か

頚椎牽引テストは、背臥位などで頭部を保持し、頚椎に長軸方向の牽引を加えたときに、首の痛み、上肢痛、しびれがどのように変化するかをみる検査です。

一般的には、牽引によって普段ある症状が軽減または消失する場合を陽性とします。

ただし、この検査で重要なのは「首が少し楽になったか」だけではありません。

臨床上より重要なのは、腕や手に広がる痛みやしびれが、牽引によって明らかに軽くなるかどうかです。

頚椎神経根症では、椎間孔周囲で神経根に加わる機械的な負荷や周囲組織との関係が、上肢症状に関与することがあります。

そのため、牽引によって上肢痛やしびれが軽減する場合は、頚椎神経根を含む近位側の神経が症状に関わっている可能性を考える材料になります。

一方で、牽引で首の局所痛だけが軽くなることもあります。

これは、頚部の筋、末梢神経、皮神経を含む感覚入力の変化によって起こることがあり、それだけで頚椎神経根症を強く示す所見とはいえません。

つまり頚椎牽引テストは、神経根症を単独で証明する検査ではありません。

牽引によって、どの症状が、どの範囲で、どの程度変化したのかを確認し、スパーリングテスト、上肢神経症状、筋力、感覚、画像所見などと合わせて判断するための補助的な検査です。

どの神経を視野に入れるべきか

頚椎牽引テストでまず考えるのは、C5〜C8神経根、場合によってはT1を含む神経根レベルの関与です。

ただし、患者様が実際に感じる症状は、その先につながっている腕神経叢や、正中神経、尺骨神経、橈骨神経、筋皮神経、腋窩神経の分布として現れることがあります。

たとえば、母指から前腕橈側にかけて症状がある場合は、C6神経根や正中神経領域を視野に入れます。

手背橈側や母指と示指の間に症状がある場合は、橈骨神経領域を考えます。

小指側から前腕尺側にかけて症状がある場合は、C8〜T1神経根や尺骨神経領域を視野に入れます。

ただし、この検査だけで、神経根、腕神経叢、末梢神経幹のどこが主に関与しているかまでは分けられません。

診断精度研究ではどう評価されているのか

この論文では、頚椎牽引テストなどの頚部誘発テストについて、頚椎神経根症に対する診断精度が検討されています。

頚椎牽引テストは特異度が高く、感度は低い検査として報告されています。

つまり、牽引によって上肢痛やしびれが明らかに軽減する場合は頚椎神経根症を疑う材料になりますが、症状が変化しない場合でも頚椎神経根症を否定することはできません。

A systematic review of the diagnostic accuracy of provocative tests of the neck for diagnosing cervical radiculopathy

Rubinstein SM, Pool JJM, van Tulder MW, Riphagen II, de Vet HCW

画像所見と症状の相関が低いことを前提にすると、頚椎牽引テスト単独で過大に評価せず、複数の所見の一部として扱う視点が必要です。

▶︎画像診断と痛みの関係

▶︎頚椎症をどう再考するのか

頚椎牽引テストの解釈

頚椎牽引テストは、痛みの原因をどの組織に求めるかを即座に決める検査ではありません。

この検査の役割は、頚部から上肢へ広がる症状に対して、頚椎神経根を含む近位側の神経が関与している可能性をみることにあります。

たとえば、牽引で上肢症状が明らかに軽減し、その分布がデルマトームや末梢神経の分布とある程度対応し、反射低下や筋力低下などの神経学的所見も伴うなら、頚椎神経根症を考える材料になります。

一方で、軽くなるのが首の局所痛だけである場合は、牽引によって頚部周囲の負荷や感覚入力が変化したことを示す所見にはなりますが、それだけで頚椎神経根症を強く支持するとはいえません。

この場合には、頚椎神経根だけでなく、頚部の末梢神経や皮神経に対する牽引刺激によって、首の局所痛や違和感が変化している可能性も含めて考えます。

また、症状変化が曖昧で再現性に乏しい場合や、末梢神経の局所絞扼を示す所見の方が明確な場合には、頚椎牽引テストの結果だけで頚椎神経根症を支持することはできません。

▶︎正中神経とは何か

▶︎尺骨神経とは何か

▶︎橈骨神経とは何か

▶︎肩や上肢の症状からみる末梢神経

結論

頚椎牽引テストは、C5〜T1神経根を中心とした頚部由来の神経症状を考えるうえで意味のある整形外科的テストです。

また、臨床では首の痛みが牽引でどう変化するかをみる目的で用いられることもあります。

ただし、首の局所痛の軽減と、上肢への放散痛やしびれの軽減は同じ意味ではありません。

この検査だけで障害部位や主な原因と考えられる組織を確定することはできず、MRIや電気生理検査とも常に一致するわけではありません。

それでも、症状分布、神経学的所見、他の誘発テストや軽減テストと合わせて用いれば、頚椎神経根から末梢神経までをどうみるかを考える入口として臨床的な価値があります。

▶︎ 整形外科的テストを吟味するとは何か


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