滑液包炎が見つかっても、それだけでは痛みの原因とは言えない
滑液包炎という言葉は、臨床ではしばしば痛みの原因として扱われます。
しかし、画像で滑液包の肥厚や液体貯留が見つかったことと、その滑液包が今ある痛みの主因であることは同じではありません。
画像で異常が見えても、それがそのまま疼痛の発生源とは限りません。
大転子部痛では、滑液包炎は少数派だった
下記の論文では、大転子部痛を示す877例の超音波所見が検討されています。
この研究では、滑液包炎が確認されたのは177例、20.2%にとどまっていました。
一方で、438例、49.9%に殿筋腱症がみられ、250例、28.5%に腸脛靭帯の肥厚がみられました。
「少数の患者(177例、20.2%)に大転子滑液包炎がみられた。」
Sonography of greater trochanteric pain syndrome and the rarity of primary bursitisSuzanne S. Long, David E. Surrey, Levon N. Nazarian
この結果は、大転子部痛をただちに滑液包炎で説明する見方を支持しません。
少なくともこの部位では、腱の状態まで含めて考える必要があります。
肩でも、滑液包を含む画像所見と症状の関係は一貫しない
下記の論文では、肩の画像所見と症状の関係がまとめて検討されています。
肩峰下滑液包の肥厚や液体貯留などの画像所見と痛みの関連を示した研究はあるものの、高品質なMRIの2つの研究では関連は認められませんでした。
著者らは全体として結果は一致していないとまとめており、滑液包の異常が画像で見つかったことだけで、その所見を肩痛の原因と断定することはできないと考えられます。
「画像所見と肩症状、およびその持続との関連には、一致しない結果がみられた。」
What Imaging-detected Pathologies Are Associated With Shoulder Symptoms and Their Persistence?Gui Tran, Paul Cowling, Toby Smith, Julie Bury, Adam Lucas, Andrew Barr, Sarah R. Kingsbury, Philip G. Conaghan
つまり、肩峰下滑液包の所見は参考情報にはなっても、それだけで肩痛の説明を完結させることはできません。
肩では、画像所見と症状を一対一に結びつけない視点が必要です。
滑液包炎は原因候補の1つだが、単独では不十分である
これらの論文を並べると、滑液包炎は疼痛の原因候補にはなっても、画像で見つかった滑液包の異常だけで今ある痛みを説明することはできないと考えられます。
臨床では、周囲組織の状態、負荷履歴、症状の時間経過、動作との関係、圧痛の分布などを含めて判断しなければ、画像所見に引っ張られた解釈になりやすいです。
慢性化した痛みでは、局所の組織所見だけでなく、痛みの持続に関わる神経系の変化まで含めて考える必要があります。
結論
滑液包炎は疼痛の原因になりえます。
しかし、今回の論文から言えるのは、滑液包炎が見つかったことだけで、その滑液包が今ある痛みの主因だと断定するのは妥当ではない、ということです。
大転子部痛では滑液包炎は少数派であり、肩でも滑液包を含む画像所見と症状の関連は一貫していません。
したがって、滑液包炎という診断名や画像所見を見つけた時点で説明を終えず、症状との関係を、末梢神経含め検討する必要があります。
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