関節モビライゼーションによる鎮痛効果は中枢神経系による効果。

関節モビライゼーションによる鎮痛効果は、中枢神経系による効果。

関節モビライゼーションで関節にアプローチすることで、鎮痛や運動機能の向上などの効果を出すと一般的には言われています。

しかし「ほんとう」でしょうか?

実はその効果は「中枢神経系によるもの」という研究があります。

研究

頚部への関節モビライゼーションによる鎮痛、自律神経系の変化、運動機能の改善は、中枢神経系によるものという結果です。

このシステマティックレビューの目的は、受動的な頚部関節モビライゼーションの効果を介する上脊髄系の関与を支持する証拠の一貫性を評価することである。

増えている研究は、中枢神経系の活性化を提案し、潜在的な作用機序として他の神経伝導路の同時活性化を伴う、非分節性の鎮痛効果をもたらす。

関節モビライゼーションにより、対照と比較して約20%の転帰が改善されたことが示唆された。

この特定のパターンは、下行性経路が徒手療法誘発性の鎮痛において重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。

我々のレビューは、受動的な関節モビライゼーションが中枢神経系内の領域を刺激する、今までとは別の可能性である神経生理学的モデルの存在を支持している。

※⇓関節モビライゼーションのコンセプトのこと。

コンセプトには、ゲートコントロールメカニズムの活性化(Melzack and Wall、1965; Wyke、1985)、神経求心性放電の減少につながるヒステリシス効果(履歴効果/Zusman、1986)、および組織潤滑性や “’脊椎関節のサブラクセーションの矯正”などの生体力学的効果が含まれる(Paris、1979)。

しかし、ますます多くの研究が、受動的な関節モビライゼーションが中枢神経系内のさまざまな領域を活性化して、刺激された特定の関節および脊椎分節を超えて広がる、多系統の反応を引き起こす可能性があることを示している。

鎮痛、交感神経系の興奮(皮膚コンダクタンス/皮膚伝導、血圧、心拍数、呼吸数)および運動機能の変化が一致していることがわかり、中枢神経系が徒手療法による治療への反応を調整することを示唆している。

次の文章は関節モビライゼーションによる運動機能への効果について取り上げています。

運動機能が損なわれているときは効果がある。そして疼痛緩和に続いて運動機能の改善が起こっているという可能性を示唆しています。

運動機能に対する受動的な副運動モビライゼーションの効果を支持する証拠は限られている。

私たちは、運動機能が損なわれた場合にのみ効果を生じる可能性がある、または運動機能の変化が治療の疼痛抑制効果に続いて起こるという仮説を立てる。

効果が中枢神経系であるならば、炎症を起こしている部位ではないところにアプローチしても良いという事が示唆されています。

痛みを伴う関節ではなく、より近位の関節に治療を適用することにより、鎮痛の非分節的性質を利用できる可能性がある。

 これは、対象の関節が炎症を起こしているか、過度に痛みがある場合は特に役立つ。 また、患者の教育、段階的な運動、薬理学的戦略など、中枢神経系のプロセスに影響を与えることが知られている戦略と徒手療法を統合する可能性もある。

論文のまとめとして、関節モビライゼーションで疼痛緩和、交感神経の活性化、運動機能の変化が起こるが、それは「関節」ではなく「中枢神経による調節」によるものということです。

受動的な副運動の頚部モビライゼーションが、疼痛緩和と交感神経系の活性化を示唆する一連の測定値の変化を引き起こすという説得力のあるエビデンスが見つかった。

これらの効果は、治療を受けている身体の特定部分を超えて広がる。主要な脳領域がこれらの反応の調整に関与している可能性が高いことを示唆する、疼痛調節と交感神経系の効果の同時活性化があるようだ。

これらの発見に基づいて、徒手テクニックのメカニズムに関する現在の見解には何らかの修正が必要であることを示唆する。

入手可能な情報に基づいて、徒手療法の治療への反応を介する中枢神経系の関与を支持する強力なエビデンスがあるように思われる。

Paradigm shift in manual therapy? Evidence for a central nervous system component in the response to passive cervical joint mobilisation 
Annina Schmida,[1], Florian Brunnerb, Anthony Wrightc, Lucas M. Bachmann  

まとめ

これらのことから、関節モビライゼーションによる効果は、

▷過去の怪我などの影響を変化させたから(履歴効果)でもなく、

▷組織の滑走性を促したからでもなく、

▷サブラクセーション(亜脱臼)を矯正したからでもない。

ということが分かります。

ではなぜ鎮痛効果が起こるかと言えば

①「中枢神経系による疼痛調節

②「交感神経系の変化

③「痛みが減ったことで起こる運動機能の変化」です。

つまりディセンディングモジュレーションによるもの。

しかしこの論文の含んでいる結論はさらに大きいのです。

遠位への徒手療法も中枢神経系による効果。

整体、東洋医学、筋膜ラインなど、「主訴部位」ではなく何らかの理論をつけて他の「非主訴部位」へアプローチする徒手療法があります。

その効果もこの研究から新しい視点として答えが導き出されます。

つまり、

何らかの理論(経絡、経穴、トリガーポイント、筋膜ライン、運動連鎖など)によって非主訴部位へのアプローチで効果が出ているのではなく、「中枢神経系の調節」が起こることで、全身に鎮痛効果が起こっている可能性が高いという事です。

であれば、「強い刺激はマイナスでしかない」のです。

だからこそ、

  • 侵襲性が低いアプローチ
  • 優しいアプローチ

によって、中枢神経による鎮痛作用を起こして、疼痛緩和を促すことがサイエンスから見て「妥当」なのです。

 

徒手テクニックのメカニズムに関する現在の見解には、何らかの修正が必要であることを示唆する。

とこの論文には書いてあります。

どんなアプローチを行っても効果は出るのです。

しかし、理論が間違っているので、その「説明モデル」を変える必要があります。