天候変化と痛み増加の原因とは?

天候変化と痛み増加の原因とは?

慢性的な痛みがある方は、台風などが近づくと痛みが悪化する場合があります。

気圧、気温、湿度、雨、嵐などのさまざまな要因が、痛みの変化に影響を及ぼすと言われています。

しかし、台風の影響を受けないという慢性疼痛の方もいらっしゃいます。

いったい何が起こっているのでしょうか?

下記の研究では、関節炎と天候の相関関係はなく、記憶や信念によるものだとする結果が出ています。

天候と痛みとの相関性はないという研究

患者(n = 18人)を1年以上研究し、関節炎の痛みと各個人に関係する気象条件との間に統計的に有意な関連性は認められなかった。

関連する統計的概念による、人々の直感的な概念の展開は、関節炎の痛みが天気の影響を受けるという信念に寄与することを示唆する。

しかし、研究文献は、関節炎の痛みと天候との間に明確な関連性を確立していない。炎症の客観的尺度を用いた研究では、肯定的な結果は見られず、痛みの主観的尺度を用いた研究は矛盾している。

気圧の増加は痛みを増加させる傾向があると感じる人もいれば、痛みを軽減する傾向があると感じる人もいれば、関連性がないという人もいる。

我々の結果は、人々は相関関係のない時系列間の関連を知覚する傾向があることを示している。

目立った偶然の一致にフォーカスを当て、それによって偶然を利用し、反対の証拠を無視する。関節炎の場合、選択的に痛みが増すと天候の変化を探し、痛みが安定すると天候にほとんど注意を払わなくなる。

痛みの悪化について説明したいという願望は、患者が確認された証拠を探し、反対の事例を無視することを促すかもしれない。

選択的記憶は、偶然の一致が不一致よりも記憶に残る場合、関節炎の痛みは天気に関連しているという信念をさらに高める可能性がある。

 もちろん、我々の研究は、関節炎の痛みと天気がすべての患者にとって無関係であることを意味するものではない。

さらに、少なくとも一部の患者については、長年にわたる患者の毎日の測定値が、データで観察されるよりも強い相関関係を示す可能性がある

しかし、散発的な相関関係が、関節炎と天候について広く行き渡っている信念を正当化できるかどうかは疑わしい。

On the belief that arthritis pain is related to the weather
DONALD A. REDELMEIER AND AMOS TVERSKY 

ラットでは天候と交感神経によって痛みが悪化したという研究

まずは先ほどと同じように、心理的な信念によるものという研究の話が出てきます。

たとえば、Clark and Nicholl1991)は30日間毎日関節リウマチ患者の痛みのレベルを調べ、痛みの強さと気圧または湿度の間に相関関係がないことを発見した。

最近、「Redelmeier and Tversky1996)」は、気象条件と痛みの関係を見つけることができなかった。

彼らは、慢性的な痛みは天候の変化に関係しているという信念に心理的要因が寄与することさえ示唆した。

しかし、末梢神経を縛って痛みを誘発されたラットが、気圧や温度の変化で痛みが増加したという研究もあります。

実験は、ニューロパシーまたは慢性的な足の炎症を実験的に生じさせたラットを使用して行われた。

気圧は8分で大気圧より20mmHg26.7 hPa)低いレベルまで低下し、外気温は22℃から30分間で7℃低下した(Sato et al.19992000)。

これらのラットが低気圧環境にさらされると、機械的アロディニアおよび痛覚過敏、ならびに熱性アロディニアが悪化した。

さらに、機械的アロディニアの増加は、最低気圧に達した直後に現れ、低気圧環境では時間とともに徐々に消失した。

多くの患者は、痛みが影響を受けたのは、天候変化の後ではなく前(52.6%)および最中(62.3%)であると報告している(Jamison et al. 1995)

交感神経系は、低気圧環境における神経障害性疼痛の悪化に寄与する。

急性の低気圧状態は、正常なヒト被験者の筋肉における交感神経活動を活性化することが報告されている(Saito et al.1988)。

低外気温による局所的な皮膚温低下は、皮膚の侵害受容性線維を刺激および感作し、痛みを増加させることがある。

寒冷環境に反応して放出されるストレスホルモン(ACTH、アドレナリンなど)は血管収縮を引き起こし、局所温度の低下と虚血を引き起こし、痛みに関する行動の悪化を引き起こす。

低外気温により、マスト細胞などの非-神経細胞が活性化され、侵害受容性物質を放出する可能性がある(Juhlin and Shelly 1961; Ringkamp et al.1994)。

Weather change and pain: a behavioral animal study of the influencesof simulated meteorological changes on chronic pain/Jun Sato

まとめ

これらのことから、

  • 人における研究では、天候と痛みの増加との関連性は低い。
  • 過去の経験や信念による心理的な影響と言われている。
  • しかし、末梢神経損傷ラットでは、気圧低下によって交感神経が活性化し、痛みが悪化した。
  • 同じく気温の低下によって皮膚の侵害受容性線維の活性化、ストレスホルモン、マスト細胞による侵害受容性物質の放出などが起こり痛みが悪化する。

ということが分かります。

痛みは脳からのアウトプットなので、記憶、信念、思い込み、感受性、交感神経など様々な影響を受けます。

そしてそれは個別性があり、一概には言えません。

クライアント様が気をつけることは、台風や気圧や気温に敏感になり過ぎないこと。先回りして天気予報を調べ過ぎないことが必要です。

セラピストであれば、個別性を理解したうえで天候を気にしすぎないように優しく接する必要があります。

また交感神経優位になるような強い刺激を与える徒手療法は、マイナスになってしまいます。

根拠のない痛み刺激は与えないようにするのが、サイエンスベースド・セラピストです。