CRPS/複合性局所疼痛症候群と遠位小径神経の損傷。

CRPS/複合性局所疼痛症候群と遠位小径神経の損傷。

複合性局所疼痛症候群/CRPSとは?

四肢などの骨折、捻挫、打撲などの外傷、手術、内臓疾患、心筋梗塞、脳卒中、末梢神経損傷をきっかけとして、治癒期間を越えても持続する自律神経異常を伴う慢性疼痛症候群のことです。

原因は不明であり、受傷後数週間経過してから発症する事が多いと言われています。

症状

▷感覚変化:疼痛、感覚異常、灼熱痛、痛覚過敏、アロディニア。

▷自律神経異常:皮膚の変化、発汗異常、皮膚温の異常、腫脹、浮腫。

▷運動異常:筋力低下、振戦、ジストニア(不随意運動)、関節可動域の制限。

▷心理的影響:抑うつ、不安など。

他にも局所的な骨粗鬆症なども起こる。

CRPS – I型

末梢神経損傷がない。反射性交感神経性ジストロフィー/RSD。
CRPS-Iの生物学的原因の客観的証拠が不足していると言われている。

CRPS – Ⅱ型

末梢神経損傷がある。カウザルギー。この2つの分類に否定的な意見も存在している。

 

次の研究では、Ⅰ型もⅡ型も神経損傷に関係しており、小径神経線維の損傷と中枢神経系の問題が組み合わさった時に起こるという仮説を提示しています。

また、Ⅰ型を脳だけの問題であると支持する最近の流れに反対を示しています。

研究

CRPS-Iが永続的な遠位小径神経損傷(Minimal distal nerve injury)、特に小径軸索の遠位変性によって引き起こされるという仮説をテストした。

CRPS-Iが侵害受容性小径線維に影響を及ぼす、外傷後の限局性の遠位小径神経損傷と特異的に関連しているという仮説を支持している。

CRPS-Ⅱと同様に、CRPS-Iは神経損傷によって引き起こされるというシンプルな仮説を提案する。神経損傷はそれほど重くなく、主に小径軸索(小径線維)に影響を与える。

これらは、外傷後に優先的に変性する可能性がある(Lekan et al.,1997)。
神経損傷による症状は、損傷したニューロンの機能を反映しており、C線維および/またはAδ線維は痛みと自律神経機能を介するため、明らかな疑いがある。

CRPS-IとCRPS-IIの同一の症状と治療反応は、共通の原因を示唆している。

さらに、小径線維性多発神経障害は、広範なCRPS様症状を引き起こす可能性がある(Jeffcoate et al.,2004; Novak et al.,2001)。

CRPS関連の限局性骨粗しょう症(Kozin et al.,1976)でさえ、小径線維が骨密度を調節しているため、この仮説で説明できる(Hukkanen et al.,1993)。

小径線維は運動機能を持たないため、筋電図は感度が低く、神経伝導の研究ではその小さくて遅い活動電位は検出されない。

神経突起の喪失は、残りの末梢ニューロンと中枢ニューロンの興奮性亢進を引き起こすことにより、痛みを引き起こすと考えられている(Woolf,2004)。

一部のCRPS-I患者は全体的に異常な神経突起の密度を持っている可能性があります。異常に高い・低い皮膚神経突起密度の両方が多発性神経障害に関連している。

CRPSの小径線維損傷の同定は、他の末梢ニューロンの関与を排除しない。

ほとんどの神経には、運動、感覚、神経節後の交感神経軸索が混在しており、個々の神経損傷患者の症状は、損傷した軸索の種類を反映している。

運動軸索損傷を有するCRPS患者は、運動症状または異常な電気生理学的検査結果を有する可能性が高いため、CRPS-IIとして分類される可能性がある。

極小遠位神経損傷を維持する多くの人々の内のごく少数がCRPSを発症するため、極小遠位神経損傷は必要かもしれないが、CRPSを引き起こすには十分ではない。

 おそらく、CRPSは、特定の二次的な中枢神経系異常の発生などが加わった「二次的な打撃」が持続する神経損傷患者でのみ発生する。

私たちのデータは、軸索喪失の重症度が変動し、しばしば最小限であるため、神経診断皮膚生検(また、面倒で高価)も非実用的であることを示唆している。

CRPS-Iでは、残りの一次求心性神経の異常な活動が、より大きな役割を果たす可能性がある。それらはCRPS-Iが神経学的状態であり、小径線維の軸索損傷が病因に関与しているという概念を支持している。これらは、CRPS-IおよびCRPS-IIサブタイプを統合する。

これらは、CRPS-Iが脳内でのみ発生する……「擬似神経疾患」であるという他の見解に挑戦する。

これらは、末梢神経の専門家によるCRPS-I患者への評価が、病変の特定に役立ち、神経障害性疼痛(神経痛)に有効な治療法がCRPS-Iの治療に適していることを示唆している。

Evidence of focal small-fiber axonal degeneration in complex regional pain syndrome-I (reflex sympathetic dystrophy) .
Anne Louise Oaklander, Julia G. Rissmiller, Lisa B. Gelman, Li Zheng, Yuchiao Chang, Ralph Gott  

結論

これらから、このような可能性が考えられます。

▷小径線維の損傷は、臨床検査ではなかなか検出されない。

Ⅱ型と同様に、I型もC線維やAδ線維という小径線維損傷が関与する。

▷神経突起の喪失は、残りの末梢と中枢ニューロンの興奮性亢進を引き起こし、痛みが現れる。

▷末梢神経には、運動、感覚、交感神経線維が混在しており、個々の神経損傷患者の症状は、損傷した軸索の種類を反映している。

▷CRPSは末梢神経と中枢神経の問題が組み合わさったときに発生する。

I型が脳内でのみ発生する「擬似神経疾患」であるという見解は否定できる。

▷神経障害性疼痛に有効な治療法が、I型の治療に適していることを示唆している。

線維筋痛症慢性疼痛もそうですが、CRPSも中枢神経だけの問題ではなく、末梢神経や細い末梢神経の問題と複合して起こっている可能性が高いと考えられます。

中枢神経系・自律神経・皮神経を含む末梢神経系、全てを合わせた「神経系」を全体的に視野に入れることが、徒手療法家にとってとても重要です。