関節モビライゼーションで椎間孔を広げて神経根をリリースする理論は間違い。

関節モビライゼーションで椎間孔を広げて神経根をリリースする理論は間違い。

椎間孔を広げて神経根への圧迫を減らそうとする徒手療法があります。

しかし、下記の研究結果を合わせると、椎間孔による神経根の圧迫は非常に珍しいケースだということが分かります。

・腰部神経根の平均サイズ(約3.6mm)に対して、椎間孔のサイズ(約8.8mm×19.4mm)は大きいこと。

・頚部神経根の平均サイズ(約2.6×4mm)に対して、椎間孔のサイズ(約7.2mm×12.3mm)は大きいこと。

・頚部脊椎を動かすと、椎間孔のサイズ70%~120%まで変化するが、それでも余裕があること。

・椎間関節の脱臼による場合、神経根の圧迫ではなく牽引による神経損傷だということ。

このような状況を考えると、そもそも椎間孔による神経根の圧迫は、神経根自体の過度の炎症など他の病理を除けばほとんど起こらず、ましてそれを徒手療法でどうこうというのは、間違った理論だということが分かります。

腰椎椎間孔のサイズは約8.8mm×19.4mm。
神経根は約3.6mm。

15の検体で腰部の神経根と椎間孔を調べた。80の腰椎神経根と椎間孔の形態計測分析を行った。

腰椎椎間孔の横断面での直径および矢状面での直径を各椎骨レベルで測定した。

腰椎神経孔中央の直径は、横断面で8.8 ± 1.7 mm、矢状面で19.4 ± 2.7 mmだった

神経根の最大直径中央値は、L4神経根で3.9 mm、最も狭いものはL1神経根で3.3 mmだった

Morphometric analysis of the roots and neural foramina of the lumbar vertebrae.

Fuat Torun, MD, Habibullah Dolgun, MD, Hakan Tuna, MD, Ayhan Attar, MD, Aysun Uz, MD, Atilla Erdem, MD

頚椎椎間孔のサイズは約7.2mm×12.3mm
神経根は約2.6mm×4mm

引用文献に基づき平均値を計算した数値です。

C2神経根:3×3.5
C3神経根:2.5×4.1
C4神経根 :2.15×3.6
C5神経根 :2.45×4.05
C6神経根:2.5×4.4
C7神経根 :2.8×4.4
C8神経根 :3.1×4

頚部神経根の平均値は、縦2.6×横4mm

頚部椎間孔の平均値は、縦7.2×横12.3mm

Cervical Spondylosis Similar Disorders / Keir Ono,Jir Dvo k.

 

頚椎椎間孔の面積は70%~120%に変化した。

頸部神経根、C4~Th1椎間孔、23人の参加者への研究。

C7Th1を除くすべてのレベルで、軸方向牽引テストの間に椎間孔断面積は有意に増加し(P 0.05)、コントロール群の120%になった。

対照的に、椎間孔断面積はスパーリングテスト(椎間孔を狭めるテスト)中のすべてのレベルにおいて、コントロールの70%(P 0.05)に大幅に減少した。

The Influence of Cervical Traction, Compression, and Spurling Test on Cervical Intervertebral Foramen Size

Hiroshi Takasaki, PT, MSc, Toby Hall, PT, MSc, FACP, Gwendolen Jull, PT, PhD, FACP, Shouta Kaneko, OT, Takeshi Iizawa, PT, BSc, and Yoshikazu Ikemoto, MD, PhD

腰椎椎間孔の面積は牽引によって26.7%増加した。

L4-L5L5-S1、急性LDH腰椎椎間板ヘルニアの患者32人への研究。

牽引中、膨隆した椎間板領域の面積、および腰筋の厚さは、それぞれ24.5%および5.7%減少しました。

脊柱管の面積と神経孔の幅は、それぞれ21.6%と26.7%増加した。

Computed tomographic evaluation of lumbar spinal structures during traction

Hidayet Sarı, MD,1 U¨ lku¨ Akarırmak, MD,2 Ilhan Karacan, MD,1 and Haluk Akman, MD 

椎間関節脱臼において神経根の圧迫ではなく、牽引によって神経損傷が起こった。

頸椎の片側椎間関節脱臼

C1-T1範囲の8つの防腐処理された人間の検体の頸椎標本を使用した。

椎間孔面積は、非脱臼側で50.72±0.88㎟から67.82±4.77㎟に、脱臼側で41.39±1.11㎟から113.77±5.65㎟に変化した。

神経根領域に変化がないことから、神経損傷を伴う片側性椎間関節脱臼の患者は、直接的な神経根の圧迫ではなく、神経根の牽引であることが明らかになった。

Morphological changes in the cervical intervertebral foramen dimensionswith unilateral facet joint dislocation.

Nabil A. Ebraheim, Jiayong Liu *, Satheesh K. Ramineni, Xiaochen Liu, Joe Xie,Ryan G. Hartman, Vijay K. GoelDepartment of Orthopaedic Surgery, University of Toledo Medical

まとめ

これらの研究から、

頚椎椎間孔を最も狭めて70%面積が減ると、7.2×12.3mm ⇒ 5.04×8.61mmになります。神経根のサイズは2.6×4mmなので空間に余裕があるので圧迫されることは考えにくい。

腰椎椎間孔にも70%という数字を当てはめてみると、8.8×19.4mm⇒6.16×13.58mmとなります。神経根のサイズが3.6mmなのでかなり余裕があります。また頚椎よりも腰椎の方が可動性が低いはずなので、この数字よりもっと余裕がある可能性もあります。

また、最後に取り上げた研究のように椎間関節の脱臼による神経の損傷は圧迫ではなく牽引によるものとすれば、椎間孔での圧迫ということは、実際にあまり起こり難いことだと分かります。

結論として、徒手療法で椎間孔を広げるという関節モビライゼーションは理論的に成り立たないという事。

またそのアプローチを行う際には、筋、膜、末梢神経、血管も動きます。そして皮膚に触れるので皮神経に影響を与えることは間違いないでしょう。

さらにそれらの固有受容器からのインプット信号は中枢に向かい、アウトプットを変えるきっかけになり得ます。

アウトプットでは、筋出力やパターンの変化、遠心性の自律神経による血流の変化、痛みの変化など様々な事柄が起こります。

関節だけ、筋膜だけ、筋肉だけと組織にとらわれずに、神経系を中心にフォーカスした方が痛みの減少という効果に徒手療法が大きく寄与できるのです。

それが世界最新の徒手療法の考え方です。