強いマッサージは痛みを増やしてしまう

強いマッサージは痛みを増やしてしまう

強い刺激のマッサージを求めるクライアント様は多いですね。

しかしそれと同時に、そのマッサージで長い期間で見て、コリがなくなったという声は聞いたことがありません。

その場では、すごくすっきりした気分になりますが、翌日にはもみ返しがあり、2~3日でとれればいい方で、酷いと一週間くらい痛くてだるいという声はよく聞きます。

ではなぜその場ではすっきりとするのでしょうか?

DNIC・痛みを痛みで一時的に消しているだけ。

それはDNIC・Diffuse noxious inhibitory controls・という理論が関係しています。日本語では「広汎性侵害抑制調節」といいます。

新しく痛みを与えることで、元からあった痛みが一時的に感じなくなる現象です。

つまり、一時的に減るだけであって、根本は何も変わっていません。フォーカスが新しい痛みに行くだけで、その刺激がなくなればまた元の痛みの箇所に意識が行きます。

そして、実はDNIC刺激を利用する徒手療法では、痛みが悪化してしまいます。

揉み返しを体験したことはありませんか?

揉み返しは、好転反応ではない。

翌日以降に起こる揉み返しは、好転反応(瞑眩反応)などと言われ、良くなる反応だと言われています。これは厚生省からも問題視されている言葉です。

サイエンスから考えると、損傷以外の何物でもないからです。

毛細血管、細い神経線維、リンパ管、筋組織の破壊、皮膚の破壊など色々起こっています。

強いマッサージは、やってもらった感がありますが、緊張を更に増幅させてしまいます。

筋肉にはこのようなことが起きている可能性が示唆されています。

筋肉が溶けている/横紋筋融解症。

強いマッサージで身体が余計に痛くなり、だるくなる場合は、筋肉が溶けている可能性があります。

横紋筋融解症といい、激しいスポーツなどで起こります。横紋筋とは普通に言う筋肉のことです。

筋肉に対し強いマッサージを行うことで筋線維が損傷し、少しとけて血中に流れ出し、腎臓に負担を与えます。

症状としては「筋肉痛、脱力感、痛み」など揉み返しと同じ症状が表れます。

つまり、コリが無くなったのは、強い刺激により筋肉が溶けた可能性があるという事です。

皮神経・血管を傷つける。

強いマッサージにより、皮膚層にある神経や血管を損傷させる可能性があります。

また、強く揉まれた部位以外にも症状が広がったり、過度に敏感になるなどの場合は、末梢神経束を傷つけ、障害が起こった可能性もあります。

感覚が鈍くなり、より強い刺激を求めてしまう

強いマッサージに慣れてしまうと、感覚受容器からの情報を脳が抑制してしまい、身体が我慢し、緊張している状態になってしまいます。

それは、身体からの入力信号を感じれず、危険かどうか判断出来なくなることを示します。つまり、より壊れやすい、傷めやすい身体になってしまうのです。

料理と一緒で、どんどん味の濃い食べ物を食べるようになり、最後は病気になってしまう事と同じだと考えられます。

下記の論文のように、痛みががあると固有受容感覚が低下すると言われています。

だからこそ、その部位に感覚が欲しくなるので、強い刺激を求めてしまうのです。

「いくつかの研究では、腰痛と腰部の固有受容との間の相互に拮抗する関係の概念を支持してきた。

「腰痛の存在は、腰部の固有受容の低下と関連する傾向があり、固有受容性信号の抑制は、疼痛感受性の強い増加を引き起こす。」

The thoracolumbar fascia: anatomy, function and clinical considerations.
F. H. Willard A. Vleeming M. D. Schuenke L. Danneels R. Schleip

 

交感神経が興奮してしまう

強いマッサージを受けると、呼吸を止めて、全身を緊張させ、刺激から身体を必死に守ろうとします。つまり、逆に全身が緊張してしまいます。

これは慢性的な不快感には逆効果です。筋肉が逃避反射により、余計に緊張してしまいます。

強い刺激を我慢していると、自律神経のうちの戦いや逃げる非常時に働く、交感神経が興奮しすぎてしまいます。

普段の仕事でも交感神経が優位になっているのに、余計にストレスがかかり、心理的にも疲労してしまい、中枢が感作します。

実際は筋肉だけを揉むことはできない

実際には、皮膚より下の組織を揉むことはできません。

皮膚層解剖学

強く押すことで、間接的に筋に圧をかけることは出来ます。

しかしそれは、筋肉を押すだけであって、固有受容刺激、侵害受容刺激、静脈血の排出くらいの意味しかありません。

逆に優しいマッサージで身体が変化するのは、皮膚の神経への影響、心理的な影響、脳の神経伝達物質などによる下行性疼痛抑制、自律神経のの変化による血管内径の変化による影響です。

「痛気持ちいい」は侵害受容刺激になる。

「痛い」のは侵害刺激で感作してしまいますが、「痛気持ちいい」のはいいように感じてしまいます。

しかし「痛い/Pain」という感覚になった時点で末梢も中枢も感作するので、慢性痛にとってはマイナスの働きになってしまいます。

有害な刺激信号の事を「侵害受容信号」と言います。つまり、生命体にとって有害、警戒すべき刺激だよと、神経線維が脳へ伝えてくれているわけです。

痛い=侵害受容刺激、気持ちいい=この場合は固有受容感覚の低下によるもの。

シンプルに分けて考えると分かりやすいと思います。

しかし患者様やクライアント様から「それじゃあ、物足りないんだよね」という声が聞こえてきそうです。

はっきり言ってそれは、繊細な感覚が感じられなくなり、「感覚が鈍くなっている」からです。

それは強い刺激じゃないと感覚の差を感じられないということ。それをこのように言います。

ヴェーバー・フェヒナーの法則

これは、ドイツの生理学者E・H・ウェーバーが発見した法則です。

例えば、あなたは1Kgのバッグを持っています。そこに350mlのペットボトルを入れたとします。

そうすると重さの変化をほとんどの人は感じられます。

しかし、そのバッグに60kgの重りを入れておいて、そこに350mlのペットボトルを入れても、ほとんどの方はその微妙な重さの差に目を閉じていれば気がつきません。

つまり、強い刺激に慣れていると、細かい差は分からなくなってしまい、より強い刺激を求め続けるようになってしまうのです。

これが身体にどんな悪影響をもたらすか想像は簡単にできます。

マッサージなどでは身体を痛め、味覚でいえばどんどんしょっぱい味付けを好むようになり、健康とはどんどん遠ざかってしまうということです。

まとめ

強いマッサージが好きな方が、気持ち良さを感じていても、けっして身体にとって良いことではありません。

特に痛気持ちいいという「痛み」の感覚がある場合は、より身体は緊張し、自律神経の交感神経も興奮してしまいます。気持ちいいという繰り返し受けたくなる要素もあるから、なおさら危険です。

強いマッサージから、低刺激の身体に良い施術に移行するには、2-3ヶ月という時間はかかります。

なぜなら、脳を教育し直さなければいけないからです。

そして、感覚を良い意味で鋭くして、優しい力加減の差を感じられるようにする練習期間が必要です。

つまり、快楽モデルか、鎮痛モデルかという事です。

強いマッサージは快楽モデルであって、鎮痛モデルではありません。

ペインサイエンスを取り入れた徒手療法は鎮痛モデルです。