線維筋痛症の痛みは皮膚の細動脈・細静脈シャントの過度の神経支配が原因である可能性

線維筋痛症の痛みは、皮膚の細動脈・細静脈シャントの過度の神経支配が原因である可能性

線維筋痛症とは?

慢性的な激しい痛み(全身、深部、手足など)、頭痛、知覚過敏、疲労感、睡眠障害、認知機能の低下、アレルギー症状の悪化、かゆみ、こわばり、内分泌異常、レイノー現象による手足の皮膚の変化、うつ症状、筋疲労、寒冷感覚異常、痛覚過敏といった症状が起こります。

さらに、慢性疲労症候群/CFS、むずむず脚症候群、顎関節症、手根管症候群、過敏性腸症候群を併発することもあると言われています。

原因

はっきりしたことは不明とされており、血液検査、MRI、CTでも異常が見られません。心理的・肉体的ストレス、手術、外傷、ウイルス感染などのきっかけで起こることもあります。中枢性感作(脳内で痛みに対して過敏になってしまう)の可能性も言われています。

皮膚の細動脈-細静脈シャント

次の論文では、このような仮説が立てられています。

皮膚の細動脈と細静脈には、それをつなぐ「シャント」と呼ばれる構造部位がある。

そして線維筋痛症患者は、そのシャントに血管を拡張させる感覚神経線維が過度に増えてしまう。

皮膚の血流調整が乱れ、線維筋痛症でよく起こる疲労感や深部痛の原因となる可能性がある。

そのような疲労感や深部痛は、シャントの血流増加による末梢組織への血流不足により、炎症物質の排出不足などが起こり、侵害受容線維の活性化に繋がり、深部痛がおこる。

その虚血は交感神経の活性化でより増長される可能性もある。つまりストレスにより悪化する。

線維筋痛症に多い寒冷刺激での痛みも、シャントの感覚線維増加による可能性がある。

このシャントの感覚線維は、血管のフィードバック機能も考えられるが、直接血管を拡張させたり炎症に関与する可能性もある。

という事が言われています。

 

Arteriole Venule Shunts (AVS)=細動脈-細静脈シャント

「皮膚細動脈とAVSは血管収縮性交感神経支配と血管拡張性小線維感覚神経支配の収斂を受ける。」

AVSでは線維筋痛症患者の神経支配が有意に増加していた。

「過度の神経支配は、血管収縮性交感神経線維と比較して、より大きな割合の血管拡張性感覚線維からなっていた。」

「対照的に、細動脈に対する感覚神経および交感神経支配は正常なままであった。」

「重要なことに、感覚線維はα2C受容体を発現しており、これは交感神経支配が感覚活性の抑制的調節を及ぼすことを示している。」

※α2C受容体は、シナプスの前膜や後膜に存在する交感神経の受容体であり、血小板凝集作用、鎮痛作用、行動調節、インスリン分泌抑制に関与していると言われています。

無毛皮膚AVSへの過度の知覚神経支配は、繊維筋痛症患者の手に、深刻な痛みの原因となる可能性が高い

「重要なことに、無毛皮膚AVSは、体温調節のためにヒトの皮膚および骨格筋のような他の組織への増加した代謝要求の期間中の血流を調節する。」

「したがって、AVSへの過度の神経支配の結果としての血流調節不全は、おそらく繊維筋痛症の疲労感の広範囲にわたる深部痛に寄与するであろう。」

繊維筋痛症に関連した過度の疲労と広範囲の深部疼痛が、末梢組織虚血と嫌気性代謝物と炎症性サイトカインによる深部組織の侵害受容器の活動亢進によって引き起こされることを多くの証拠が示している。

「虚血の原因は、過度の交感神経系を介した血管収縮から生じると考えられており、これもストレスによって悪化する可能性がある。」

「熱刺激を用いた試験は、熱痛覚過敏が遅発性の「二次痛」反応として起こることを実証しており、中枢性感作に寄与する「ワインドアップ」メカニズムを仮定するための理論的根拠を形成している。」

「しかしながら、寒冷条件は特に繊維筋痛症の疼痛および血管攣縮を悪化させるそして寒冷感覚異常および痛覚過敏は繊維筋痛症対象者においてより頻繁に起こる。しかし熱痛覚過敏は一般的に感覚異常なしか、寒冷痛覚過敏を有するものの間の一部としてのみ起こる。」

「感覚神経支配は、交感神経活動を調節するために血管関連の感覚フィードバックにおいて役割を果たす可能性が高いが、血管拡張における直接的なエフェクターの役割と繊維筋痛症患者の潜在的な炎症にも関与している可能性がある。」

「細動脈やAVSとは異なり、皮膚細静脈はまばらな神経支配を持っている。」

Excessive Peptidergic Sensory Innervation of Cutaneous Arteriole–Venule Shunts (AVS) in the Palmar Glabrous Skin of Fibromyalgia Patients: Implications for Widespread Deep Tissue Pain and Fatigue.

Phillip J. Albrecht, PhD Quanzhi Hou, MD PhD Charles E. Argoff, MD James R. Storey, MD James P. Wymer, MD PhD Frank L. Rice, PhD

下記は同じ研究者による別の文章です。

寒冷条件下ではシャントが開く原因になるので痛みが増す。

手と足に必要以上の血流が送られてしまい、筋肉への血流が減り、筋肉の深部が虚血になりやすくなり、深部痛に繋がり得る。

それらによって脳が侵害受容刺激に反応して感作状態になり、慢性痛に繋がる可能で鵜がある。

感覚線維はシャントを開く原因となるので、それらは寒冷条件下で特に活性化し、それは一般的に線維筋痛症患者にとって非常に煩わしいものである。」

「体温調節への関与に加えて、血流の大部分は通常私たちの手と足に流れる。それらの代謝に必要とされる以上のものがある」

「私たちが運動を始めるとき、手と足はそこから血流が筋肉のような体の他の組織に向けられることができる貯蔵所として機能する。」

「したがって、手の中のこれらのシャント間で発見された病理は、全身の筋肉への血流を妨げている可能性がある。

この誤った血流は、筋肉の痛みならびに線維筋痛症患者における乳酸の蓄積および低レベルの炎症に起因すると考えられる疲労感の原因となり得る。これは順番に、脳内の活動亢進に貢献する可能性がある。」

「正常な血流の変化が、安らかではない睡眠や認知機能障害など他の線維筋痛症症状の根底にある可能性があることも指摘した。」

「このデータは、線維筋痛症患者の高次脳中枢および大脳皮質への血流変化を示す他の公表されている証拠と一致するように思われる。」

Skin Abnormality May Prove Biological Basis for Fibromyalgia
By Rick Nauert PhD

まとめ

この論文では、線維筋痛症の原因が「脳」だけにあるわけではないことを示唆しています。

脳である中の敏感さを認知行動療法や心理的アプローチで減少させる必要はもちろんあります。

しかし、皮膚の細動脈細静脈間シャントの過度の感覚線維の増加が線維筋痛症の可能性があると言っています。

まだ仮説なので断定は出来ませんが、中枢だけではなく末梢の病理も視野に入れる必要があります。