CT線維はオキシトシンを放出させ鎮痛効果を起こす

CT線維はオキシトシンを放出させ鎮痛効果を起こす

CT線維は、C-Tactile/触覚線維という意味があります。

C線維といえば、無髄、つまり信号伝達が遅く、侵害受容を伝える線維が有名です。

しかし、このCT線維は、侵害受容と反対の好ましい情報を中枢へ伝える神経線維です。

皮膚に優しく触れたり、ゆっくり撫でる無害な刺激により、CT線維は反応して、中枢からオキシトシンという物質が放出されます。

オキシトシンは、ストレスを軽減したり、幸福感を感じる神経伝達物質です。

CT線維は有毛皮膚には存在しますが、無毛皮膚には存在しません。

つまり、哺乳類の毛づくろい/グルーミングにとってとても重要な神経線維と神経伝達物質だということです。

グルーミングは寄生虫を取り除く効果はありますが、それよりも群れ同士の絆を深める効果が重視されています。

現代ではグルーミングは、言葉によるおしゃべりに変わったと言われています。

ちなみに、CT線維を反応させ、オキシトシンを誘発するのに最適な撫でる速さは1〜10 cm / sと言われています。

つまり1秒間に平均5cmくらい優しく撫でるのがちょうどいいのです。勿論、触れるだけでもオキシトシンは放出されます。

オキシトシンどこから?

視床下部の室傍核 (PVN) や視索上核 (SON) にあるニューロンから分泌され、下垂体後葉など様々な脳の部位に作用して機能を調節しています。

オキシトシンと効果

好ましい人を見ること、心地よい音を聞くこと、香りを嗅ぐこと、食べること、好ましい事を考えること、心地よい状況によっても引き起こされると言われています。

つまり、接触以外でも放出され、ある「状況」の意味づけによって、オキシトシンが出るかどうかも決まるということです。

オキシトシンには、このような効果があるとされています。

社会的行動の増加

・疼痛閾値を上げる

・コルチゾールレベルの低下

・抗ストレス効果

・交感神経活動を抑制して、副交感神経活動を刺激

・胃腸消化機能の活性

・血圧と脈拍数の低下

・抗不安作用、落ち着く

・幸福感

・HPA軸の活性化を減らす

HPA軸とは?

視床下部-下垂体-副腎系/Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis。

ストレス刺激を受けると、

1. 視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され!

2. 脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌され、

3. 副腎皮質から、コルチゾールが分泌されます。

これらの働きのことをHPA軸といいます。

ちなみにコルチゾールとは、ストレスを受けた時などに放出され、糖代謝などの他に抗炎症作用や免疫抑制効果があります。

次の研究では、オキシトシンの放出により、

・ドーパミンの促進により快適感覚や意欲が湧く。

・ノルアドレナリンの減少により交感神経の興奮がおさまる。

・内因性オピオイドの活性化による鎮痛効果。

・扁桃体の活性を減少させることで不安や恐怖を抑える。

・HPA軸の反応を減少をさせることで、ACTHが減る。

・それによってコルチゾールが減少することでストレス反応が減少する。

という複雑な作用を及ぼすということが分かってきました。

ちなみにオキシトシンが半減する時間は、「30分」と言われています。

 

「オキシトシンは側坐核におけるドーパミン放出の促進、扁桃体の作用による社会的相互作用の増大および幸福感の増加、青斑核(LC)および孤束核(NTS)で放出されるノルアドレナリンの減少、視床下部 – 下垂体 – 副腎皮質(HPA軸)の作用によりストレス反応を減少させる。

「オキシトシンは、中脳水道周囲灰白質(PAG)のオピオイド作動性の活性を増加させることによって、疼痛に対する感受性を低下させる可能性もある。オキシトシンはセロトニン作動性の活性も調節する。」

「人間の体内循環におけるオキシトシンの半減期は30分。」

「オキシトシンは他の伝達系の機能を調節することによってその作用のいくつかを発揮する。 例えば、NAのドーパミン、セロトニン作動性神経線維内のセロトニン、青班核および孤束核内のノルアドレナリン、迷走神経運動神経核内のアセチルコリン、PAGおよび脊髄内の内因性オピオイドの放出に影響を及ぼす。」

 「視床下部内および下垂体前葉の神経から放出されるオキシトシンがそれぞれCRFおよびACTH分泌を抑制すること、そして循環しているオキシトシンが副腎からのコルチゾール分泌を直接抑制し得ることは十分に確立されている。」

「オキシトシンは、無害な刺激に応答して、視床下部に放出されてHPA軸の活性を低下させ、扁桃体に放出されてストレスおよび恐怖に対する反応を低下させ、それによってLC青班核におけるノルアドレナリン作動性ニューロンの活性を低下させる。」

 Self-soothing behaviors with particular reference to oxytocin release induced by non-noxious sensory stimulation

Kerstin Uvnäs-Moberg, Linda Handlin and Maria Petersson

 

ここで、いくつかの神経伝達物質について、説明しておきます。

色々な神経伝達物質

・コルチゾール

副腎皮質で生産されるホルモン。ストレスによりコルチゾール値が高まると、血糖値上昇、免疫力の低下、筋肉の修復抑制、骨がもろくなる、海馬の萎縮(記憶を司る)、脳細胞の減少、不眠となる。

・ドーパミン

脳内で放出されるノルアドレナリンとアドレナリンの前駆体。快適感覚や意欲や学習に関与。ドーパミンが減少するとパーキンソン病になり、増えすぎると統合失調症の幻覚などの症状を引き起こす。

・ノルアドレナリン

怒り、ストレス、痛みなどにより脳や交感神経末端などで分泌され、交感神経を活性化させるホルモン。過剰になるとイライラ、興奮、緊張、怒りなどの感情が高まる。

・アドレナリン

ノルアドレナリンと同じドーパミンが前駆体。交感神経を刺激するホルモン。主に副腎髄質から分泌され、筋肉、血管、交感神経に作用する。

・内因性オピオイド

・βエンドルフィン

脳内で分泌される快感ホルモン。気持ち良さ、幸福感や多幸感などの「快感」を感じるのは、このオピオイドがドーパミンの放出を促す働きがあるから。鎮痛と鎮静効果がある。食欲、睡眠欲、生存欲など本能的な欲求が満たされると放出されると言われている。前駆体はプロオピオメラノコルチンで、副腎皮質刺激ホルモンと同じ。

・エンケファリン/ダイノルフィン

βエンドルフィンと同じ脳内麻薬様物質。鎮痛と鎮静効果。

・CRF

視床下部から放出され、下垂体前葉に行き、ACTHの分泌を促進させる。

・副腎皮質刺激ホルモン/ACTH

脳内の下垂体前葉から放出されるホルモン。前駆体はβエンドルフィン とおなじプロオピオメラノコルチン。視床下部-下垂体-副腎皮質のHPA軸を構成する。副腎皮質に働きかけて糖質コルチコイド(コルチゾールなど)の分泌を促進する。

・セロトニン

腸内に90%(整腸作用)、血液中(止血・血管の収縮作用)に8%、残りの2%が脳内に存在。

脳幹から放出されるセロトニンは、ノルアドレナリンの作用を制御して、ストレスを和らげたり、痛覚を抑制したりする「安らぎ」ホルモン。睡眠や体温調節にも関与。また腸でのセロトニンは、蠕動運動に関わり、ストレスにより働きすぎると下痢気味となり、過敏性腸症候群の原因となる。末梢では血管の収縮や、発痛物質としての役割がある。トリプトファンからできる。

・アセチルコリン

中枢では副交感神経の神経伝達物質として機能する。

まとめ

無害な皮膚刺激によりCT線維を活性化させると、オキシトシンが放出されます。

それによって様々な神経伝達物質が関与して、相互的にストレス反応を減らし、鎮痛作用を起こし、穏やかで心地よい気分になります。

 侵害受容のことを英語で「No-ciception」といいます。

DNMではこの線維の働きのことを、

「Yes-ciception」といいます。

直訳すると「侵益受容」という意味になります。

害ではなく「益」を与えてくれるのがCT線維なのです。

徒手療法において、「触れるだけ」というアプローチがあります。

そのアプローチの効果の機序で、1番大きいのがこのCT線維による効果です。 

安心できる環境のなか、信用出来そうなセラピストから静かに触れられ続ける。

それによりストレス軽減や疼痛の減少が起こるというわけです。

さらに触れなくてもその状況を好ましく思うだけでもオキシトシンが放出される可能性があります。

つまり触れないアプローチも科学的に理由が説明出来るというわけです。