内臓マニュピレーション/腸もみの効果は神経によるもの。

内臓マニュピレーション
腸もみの効果は、神経によるもの。

内臓の膜の癒着や、位置を直すというアプローチのことです。実際の根拠を調べた論文では、根拠がないと言われています。 しかし、終わった後の腹部が楽になったような感覚は、一体何が起こった結果なのでしょうか?

この論文では、証拠は見つからず、様々な研究はバイアスがかり信頼性に劣ると言っています。

「このレビューの目的は、診断技術の信頼性と内臓オステオパシーで使用される治療技術の臨床的有効性に関する科学的研究を特定し、批判的に評価すること。」

「内臓オステオパシーに使用される診断技術の信頼性に関する証拠は見つからない。ほとんどの研究はバイアスの高いリスクを提示し、評価された結果に対する信頼性を示すことに失敗している。」

Reliability of diagnosis and clinical efficacy of visceral osteopathy: a systematic review. 
By Albin Guillaud, Nelly Darbois, […], and Nicolas Pinsault

腹部の疼痛や不快感は、腹部の皮神経が絞扼されたことで起こっています。この皮神経は脊髄前根から出たものが肋間神経となり、腹部まで伸びている神経です。前側ですと、直角に皮膚まで伸びるため、絞扼や圧迫の影響を受けやすいという研究です。

「前(腹部)皮神経絞扼症候群(ACNES)は臨床医にはめったに見られない難解な状態のように聞こえるかもしれない、一般的な状態だ。」

「実際の診断が決定できないとき、これらの患者の多くは精神医学的診断を受けた。実際、腹壁の痛みの最も一般的な原因は、腹直筋の外側縁での神経絞扼だ。」

「Kopell and Thompson は、末梢神経絞扼は、神経が線維性または骨線維性のトンネルに入る方向に変わる解剖学的部位、または神経が線維性または筋肉帯を通過する部位に起こると述べている。機械的に誘発された刺激がこれらの場所で最も起こりやすいので、絞扼はこれらの場所で起こり得る。」

「これらの部位での筋収縮は、直接的な圧迫による損傷が加わる可能性があるが、筋肉活動による神経への牽引も可能性が高いと考えている。機械的刺激は局所的な腫脹を引き起こし、神経を直接傷つけたり、神経の循環を危うくすることがある。」

「主な神経幹の痛みは、患部の近位または遠位に見られることがある。(放散痛現象)。」

「近位の痛みは、血管攣縮、または絞扼点に対する神経幹の不自然な牽引から生じ得る。ACNESでは、これらすべてのメカニズムが機能している可能性がある。」

「皮膚と筋肉の間の異なる動きはこの状況を悪化させる。」

「前枝は筋肉の背部へほぼ直角に入るため、筋肉にもっと斜めの角度で入る後枝および外側枝よりも機械的刺激を受けやすい。」

「外側枝は、体幹の側屈やねじれの影響を受ける。後枝は、屈曲、持ち上げること、ねじれの影響を受ける。」

「副枝は主枝の上下の筋肉壁を穿孔するが、隣接する筋肉からも出る。これらの枝は、触れて痛みがあり、症状がない限り、触診するのが困難だ。」

Abdominal Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome (ACNES): A Commonly Overlooked Cause of Abdominal Pain. 
By William V Applegate, MD, FABFP

この論文では、腹部への持続圧は、感覚受容器のルフィ二を活性化させ、副交感神経反応を引き起こし、筋緊張の低下を起こすという自律神経系への影響が言われています。

また、腸管の機械的刺激に反応する感覚神経により、セロトニンがでて蠕動運動や消化を促す可能性があります。ヒスタミンは腸管の収縮に関与しています。つまり、腸管の動きを促す可能性があります。

「骨盤への持続的な圧力と同様に人間の腹部領域への深い機械的圧力は、同期性皮質EEG(脳波)パターン、迷走神経線維における活動の増加、およびEMG(筋電図)活動の減少を含む副交感神経の反射反応を引き起こすことが証明されている。」

「Ernst Gellhornによる視床下部同調状態モデルによれば、迷走神経緊張の増加は自律神経系および関連する内臓の変化を引き起こすだけでなく、視床下部の前葉を活性化する傾向がある。」

「このような視床下部の「エネルギー蓄積的同調」は、猫および人の両方において、全体的な筋緊張の低下、より静かな感情的活動、同期性皮質活動の増加を誘発する。」

「したがって、徒手による深い圧力、特にそれがゆっくりまたは安定している場合、間質とルフィニ機械受容器を刺激し、それが迷走神経活動の増加をもたらし、局所的な体液動力学および組織の代謝を変えるだけでなく、全体的な筋肉弛緩と同じように、より平和な心と感情的な覚醒の減少をもたらす。」

「その一方で、突然の深く触れる圧力、またはつまむこと、または他の種類の強くて速いマニュピレーションは骨格筋、特に脊髄神経前枝を介して神経支配される「発生学的な屈筋群」の全般的収縮を誘発することが示されている。 」

「機械的受容器は、内臓の靱帯ならびに脊髄および頭蓋の硬膜において豊富に見出されている。内臓または頭蓋仙骨オステオパシーの影響の大部分は、結果として生じる深い自律神経の変化を伴う、機械受容器の刺激によって十分に説明する得ることは非常に一貫性があると思われる。したがって、より難解な仮定に頼る必要はないと思われる。」

「腸神経系の豊かさに関する最近の発見(Gershon 1999)は、私たちの「腹の脳」は1億以上のニューロンを含み、大部分、皮質脳とは無関係に作用することを私たちに教えてくれた。」

「興味深いことに、数千のニューロンのうち、これら二つの脳の間の非常に小さな繋がりは、プロセスに関与する多くのニューロンの9倍で構成されていいる。それらはトップダウン方向に関与するニューロンの数と比較して、下の脳が上の脳に何をすべきかを告げるものた。」

「腸脳の感覚ニューロンの多くは機械受容器であり、活性化されると、他の反応の中でも重要な神経内分泌の変化を引き起こす。」

「これらには、セロトニン(その90%が腹部で作られる重要な皮質神経伝達物質)の産生の変化や、ヒスタミンなどの他の神経ペプチド(炎症過程を増加させる)の変化が含まれる。」

Robert Schleip; Fascial plasticity – a new neurobiological explanation: Part 1~2

結論

内臓マニピュレーションは、膜の癒着を剥がしたり、内臓の位置を正している訳ではありません。では何が効果を感じさせるのでしょうか?

3つあります。

1. 持続圧によりルフィ二終末が反応し、副交感神経反応を引き起こす。

2. 腸管の機械受容器を刺激することで、腸管の蠕動運動や収縮に関与するセロトニンやヒスタミンが放出される。

3.皮神経の絞扼状態が変化して、腹部の痛みや不快感が減る。 しかし、この3つに強い力は必要ありません。

内臓アプローチで内臓を傷つけたという論文もあります。

筋膜リリースのコラムでも書きましたが、内臓アプローチは、皮膚や筋膜と同じルフィ二や自律神経、皮神経の絞扼などの影響によるものです。

また、内臓の手前には厚い脂肪層があるので、徒手で効果を出すことは物理的に非常に難しいのが現実です。

結局は、それより浅層にある、皮神経アプローチによる影響が大きいと考えるのが妥当でしょう。