ストレッチの効果は筋肉の伸びではなく感覚の変化によるもの

ストレッチの効果は 筋肉の伸びではなく 感覚の変化によるもの

※2019/04/17追記

ストレッチを行うことで、短縮した筋肉を伸ばすと言/れています。しかし実際には自動・他動含めてストレッチでは筋肉の長さは長くなりません。

巷で理論的に言われていることは、粘弾性変形、サルコメア増加、伸張反射による神経筋の弛緩があげられています。しかし、それらは疑わしい理論だという研究があります。

次の研究では、粘弾性の変化や結合組織の伸張は一時的であり、サルコメアの増加を確認した試験も無く、伸張反射による変化も認められませんでした。 そして、ストレッチ後の伸張性の増加は、感覚の変化によるものであり、心理的要因もあり得るとの結果が出ています。

 

「粘弾性変形の生体力学的効果はごくわずかで時間も短いため、その後のストレッチに影響を与えることはない。あるハムストリングの研究では、45秒間の静的ストレッチは、30秒後に行われた次のストレッチに大きな影響を及ぼさないことが判明した。」

「結合組織の永続的な変形、引用された証拠のいずれも塑性変形の古典的なモデルをサポートすることが見出されませんでした。加えられた張力による長さ測定の増加は一時的なものです。引張力が取り除かれると、元の長さに戻ります。」

「一連のサルコメア数が治療的介入により変化するかどうかを組織学的レベルで評価したヒトの伸張試験はありません。」

「リハビリテーションの文献では、神経筋の「伸張反射」による筋肉の不随意収縮が静的ストレッチ中の筋肉の伸長を制限する可能性があることをしばしば示唆している。筋肉の伸展性を増大させるために、ゆっくりと行われる静的ストレッチはそれを受けている筋肉の弛緩を誘導する神経筋反射を刺激することがしばしば提案されてきた。

しかし、実験によるエビデンスはこれらの主張のいずれも支持しない 伸張反射は、短時間の筋収縮を生み出し、ミッドレンジの位置にある筋肉の非常に迅速かつ短いストレッチの際に活性化することが示されている。

筋肉が長くゆっくりと受動的にストレッチしてエンドレンジに位置する被験者のほとんどの研究では、ストレッチされた筋肉の有意な活性化は実証されていない。」

「バリスティックストレッチングをシミュレートした研究でさえ、ヒトおよび動物モデルの両方において、筋肉の有意な伸張反射活性化の証拠を示さなかった。」

「単一の「コントラクト- リラクゼーション」ストレッチの効果を評価した研究と、短期間(3および6週間)ストレッチの研究では、ストレッチされた筋肉の有意な筋電図活動は見られなかった。 したがって、エンドレンジの関節角度の増加は、神経筋リラクゼーションに起因するとは考えられない。」

「これらの研究は、ストレッチング直後および短期間(3〜8週間)のストレッチプログラム後に観察された筋伸展性の増加は、感覚の変化のみによるものであり、筋長の増加によるものではないことを示唆している。」

心理的要因も筋肉の伸展性の増加に役割を果たす可能性があります。」

Increasing Muscle Extensibility: A Matter of Increasing Length or Modifying Sensation? Cynthia Holzman WepplerS. Peter Magnusson

次の研究では、6週間ストレッチした効果は、4週間休憩すると完全になくなるとのことです。

例えば、4週間の休憩は6週間のストレッチングの増加を完全に無効にします(Willy et al.,2001)。

次の研究では、神経症状のある患者の拘縮を減らすためにストレッチを行うことは、効果がないと結論が出ています。ストレッチの回数などを増やしても、ストレッチの方法を変えても同じことだと言っています。

「神経症状による拘縮の予防へのストレッチに効果はない。」

「拘縮は、脳卒中、脊髄損傷、外傷性脳損傷、および脳性麻痺などの神経症状の一般的な合併症です。それらは、関節可動性の減少および受動的な関節運動に対する抵抗の増加によって特徴付けられる。拘縮は痙縮および軟組織の構造変化を含む、神経および非神経の要因によるもの。」

「神経症状を持つ人々の痛み、痙縮、または活動制限に対するストレッチの効果はほとんどまたはまったくない。

「ストレッチの直接的な効果はおそらく粘性変形によるものであり、したがって一時的なものと思われる。」

「ストレッチの量を増やしても関節の可動性が増加しないこと、そして特定のタイプのストレッチが他のものより優れているという証拠はないことを示す。」

「結論:規則的なストレッチは、神経症状を持つ人々の関節可動性、疼痛、痙縮、または活動制限において臨床的に重要な変化を生じることはない。」

Effectiveness of Stretch for the Treatment and Prevention of Contractures in People With Neurological Conditions. Owen M. KatalinicLisa A. Harvey Robert D. Herbert

運動前後にストレッチする習慣があるかもしれません。ある意見では、ストレッチを行うことで遅発性筋肉痛を減らすと言われています。しかし次の研究では、その効果はないと結論がでています。

「ランダム化試験からの証拠は、運動前後のいずれで行っても、筋肉のストレッチは臨床的に重要な遅発性筋肉痛(DOMS)の軽減をもたらさないことを示唆している。」

Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. Herbert RD, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011.

まとめ

これらの研究から、ストレッチによって筋肉の長さは変わらず、粘弾性の変化や伸展反射は一時的な変化しかもたらしません。結合組織も伸びることはありません、もし結合組織が伸びた場合は微小な損傷によるものです。

そして、ストレッチによる効果は、感覚の変化によるものです。そして心理的要因も関与しています。

例えば、施術の前後で可動域が変化することがあります。この可動域の変化は、感覚の変化や心理的要因のためであって、組織の変化ではないというわけです。

これは検査や動作確認で気をつけなければならない事を示唆していますし、講習会など沢山の視線があると、心理的に可動域が増えるということもあり得ることにつながります。

また神経症状を持つ方へのストレッチは効果がないとされていますが、これは中枢の損傷などの問題であって、末梢神経の問題ではないからです。だからこそ感覚(中枢)の変化が起こらないので効果がないということです。

疼痛と可動域の関係で言えば、疼痛がなくなることで可動域が増えることはよくあります。疼痛の原因が末梢神経の侵害受容によるものであれば、その原因を取り除けば身体感覚は変化して可動域は増えます。

また、ストレッチを行うことは、末梢神経をスライドさせたり伸ばしたりという行為にもなります。

末梢神経、末梢神経周囲のコンテナ、神経の血管が動き、脈管の配列が変化して神経やニューロンの健康に一役買います。

ストレッチの効果が筋肉の伸張によるものではないということは、結合組織(筋膜)をリリースするアプローチも、感覚の変化や心理的な要素、神経系の変化による効果だという可能性があります。

ストレッチ自体は良いことだと思います。しかし、その機序を改めて考え直す必要があると思います。